”東京オリンピック招致成功”の定義とは? グローバルエリートが東京オリンピック誘致にモノ申……さない!

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無責任な“専門家”の経済効果試算

特に恩恵を受けるのはゼネコンと広告会社であるが、「7年間にわたる3兆円の経済効果」といっても、実はたいした額ではない。仮にすべての恩恵がゼネコンに行くと非現実的な仮定をしても、1年間で4000億円、営業利益率2%の世界なので、利益の積み増しは80億円、これを5大ゼネコンだけで分けたとしても1社当たり16億円の積み増しにすぎない。

300億円の営業利益水準のゼネコンにとっては5%の押し上げ効果があるだけであり、ファンダメンタルへの微々たるインパクトを知っているヘッジファンドは、東京オリンピック誘致成功が発表された直後に売りに回って、おめでたい個人投資家とのんきなロングオンリーの資産運用会社から、おカネを巻き上げることであろう。

長期的な公共事業の削減傾向と資源コスト高、過当競争といった長期的課題を、限定的な五輪特需で解消できると本気で思っているのだろうか。

怒りを通り越してアナリストのことが心配に

冒頭で紹介した証券会社による“150兆円効果”は理由づけ(社会インフラの再構築で50兆~60兆円、また観光業、これも成長に伴う経済効果で、100兆円近い金額が期待できるとしている。また湾岸エリアに集中する選手村などの大きな施設の有効活用が、東京都内の中心部の混雑を緩和させるとしている)も薄弱に思え、酔っぱらった後の3次会のカラオケの場での与太話ならまだしも、国内外から尊敬される名門証券会社が、メディアで堂々と言えるクオリティの分析とは思えない。

こういう放蕩な発言が、証券界で働くプロフェッショナルへの尊敬を押し下げ、“しょせん株屋”とか陰口をたたかれるきっかけになるのだ。参考に言っておくと、ロンドンオリンピックでロイズバンキンググループやオックスフォード・エコノミクスが12年間で165億ポンド(2兆5000億程度)の経済効果と試算しており、“効果”の定義によっても異なるが、150兆円という数字が極めて突飛なことがよくわかる。

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