米国の「北朝鮮攻撃」はどの程度現実的なのか 米ブルッキングス研ポラック氏に聞く<上>

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――その点について、米国はどのくらい自信を持っているのですか。

米国は非常に注意深く事態を観察している。たとえば、北朝鮮は最近の発射を、平壌近くの施設で実施できるように計画していたという証拠を発見した。以前このような場所で実験を実施したことはなかった。

北朝鮮からの情報は、以前より多く流出している。私が知っている韓国政府の幹部職員によると、「北朝鮮のような腐敗したシステムの中では、情報を入手することはそんなに難しいことではない」ようだ。つまり、仮に戦争が起きるという証拠を発見すれば、米国は情報をかき集めて、検討することができる立場にあるということだ。

米国は北朝鮮の攻撃を抑止するために、そして先手を打つか、攻撃に対して報復するかのいずれかのために、韓国と軍事演習を行っている。先制攻撃は見込み違いのリスクがあるために、軽率に行うものではない。もし米国が戦争の兆候を察知すれば、その被害をできるだけ抑え、可能であれば北朝鮮の攻撃を未然に防ぐことが最優先になるだろう。

先制攻撃の可能性は高まっている

――先制攻撃と報復の違いは、紙一重に近い。

そのとおりだ。先制攻撃をするには、北朝鮮の首脳陣たちの考え方を知り、ひっきりなしに行われるプロパガンダと、北朝鮮という魔法の王国の真意は何なのかということとを、識別することが必要になる。

私の直感では、北朝鮮のミサイルと核開発能力の進化によって、先制攻撃の可能性は高まっている。北朝鮮が核兵器を使うかどうかはわからないが、こうした兵器やミサイル開発の進化は、先制攻撃の可能性を下げるどころか、上げている、と感じている。それは、過去と比較して、北朝鮮について懸念する事態が増えていることが背景にある。

――一方、北朝鮮の攻撃に対する報復に関しては、米国の政策立案者たちはそこまで真剣に話し合っていませんが、米国による報復はかなり強いものになるのでしょうか。

それは間違いない。この戦争は信じられないくらい破壊的なものになるだろうが、米国は躊躇しないだろう。

米国はこのこと、つまり、米国は恐れず反撃するということを、北朝鮮政府に繰り返し伝えなければならない。これは何十年間にもわたる米国の方針であり、これが変わることはない。そして、米国のこのスタンスを北朝鮮に理解してもらわなければならない。これは抑止力にとって不可欠なものであり、朝鮮半島で数十年間機能してきたものだ。北朝鮮による核兵器の所有が、この状況を本質的にさらに危険にしている。だが、抑止力の根底にある力学は、まだ機能している。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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