高齢者の虫歯が悪化しやすく危険すぎるワケ すぐに治療しないと別の病気を招く場合も

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唾液の分泌量が減ったから

高齢になると、唾液の分泌量が減ります。唾液には虫歯菌が好む酸性の状態を中性に戻す効果がありますので、唾液分泌量が少ないと虫歯になりやすくなってしまうのです。

また、唾液には初期の虫歯(エナメル質が少し溶けた程度の虫歯)を治癒し、元に戻す作用もあります。唾液が豊富に分泌されないと、虫歯治療効果も作用しにくくなりますので、虫歯がそのまま進行してしまうことになるのです。

義歯を利用する人が多いから

部分入れ歯を利用している方も多いでしょう。もちろん、欠損部分に入れ歯を入れることで生活の質を保つことは重要です。しかし、入れ歯の留め金部分には食べ物のカスがたまりやすいですので、きれいにブラッシングをしないと留め金部分や入れ歯とほかの歯のすき間が虫歯になってしまいます。

虫歯に気づいたらすぐに治療するべき理由

誰にとっても、虫歯に気づいたらすぐに治療することは鉄則です。では、なぜとりわけ高齢の方こそすぐに治療すべきといえるのでしょうか。

動脈硬化のリスクが増える

虫歯と歯周病とは切っても切れない関係にあります。大まかに分けると、細菌によって歯が侵食される状態が虫歯、歯肉や歯の根元が侵食される状態が歯周病といえます。いずれも細菌によって引き起こされる疾病ですが、この細菌は虫歯や歯周病だけでなく、動脈硬化も誘発することがわかっています。

厚生労働省でも歯周病の予防が動脈硬化の予防になり、結果として脳梗塞や心筋梗塞、狭心症の予防になると説明しています。血管の健康を守り、脳と心臓に十分な血液を送るためにも、虫歯や歯周病が重篤な状態にならないうちに早く治療する必要があるといえるのです。

糖尿病のリスクも増える

虫歯菌や歯周病菌が影響するのは、動脈硬化だけではありません。歯茎に炎症が起こった状態が続くと炎症性サイトカイン・TNF-αという物質が放出され、膵臓から分泌されるインスリンの働きが阻害されるようになります。インスリンの働きが阻害されると血糖値が低下せず、高血糖状態が続くことになり、糖尿病になってしまうのです。

糖尿病になると失明や腎不全などを引き起こすこともあります。糖尿病のリスクを低減させるためにも、口内に異常を感じたらすぐに治療をすることが勧められるのです。

肺炎になることも

高齢者の死因の中でも上位の「肺炎」。実は肺炎も、虫歯菌や歯周病菌から発生することがあるのです。肺炎は肺がウイルスや細菌にかかることで起こる病気ですが、食べ物や唾液に口内細菌が混じり、それらが肺に誤って流れ込んでしまうことでも引き起こされます。このような肺炎を「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」と呼びます。

特に高齢者や寝たきりの人は、飲み込む力が衰えていることが多いですので、誤って唾液や食べ物を肺に飲み込んでしまうことがあります。普通の食べ物や唾液ならいいのですが、細菌がついた食べ物などから肺炎へと進行してしまうかもしれません。

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