禁煙が全くできない人が知らない3つの依存 体、心、習慣…それぞれ対処法は違う

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タバコの煙には依存性毒物のニコチンが含まれています。ニコチンが体の中からなくなっていくと禁断症状(医学的には離脱症状といいます)が出るようになった状態を、「体の依存」と呼びます。

具体的には、タバコを吸わないでいると、不安になる、イライラする、落ち着かない、集中できない、眠気を感じる、ストレスを感じる、吸いたい気持ちを抑えられない……といった症状です。

自然なドーパミンやセロトニンが出なくなる

また、ニコチン依存症は、「脳の変性疾患」ともいわれています。ニコチンが少しずつ脳の構造を変え、依存症の脳にしてしまうのです。

脳に入ったニコチンは、中脳の腹側被蓋野の「アセチルコリン受容体」にくっつき、その信号が伝わり大脳の側坐核で、「快感ホルモン」「やる気ホルモン」であるドーパミンが放出されます。

本来、「アセチルコリン受容体」は、アセチルコリンという脳内物質がくっつくべき場所です。つまり、喫煙者の脳では、ニコチンがアセチルコリンの役割を乗っ取ってしまっているのです。しかも、ニコチンは注射より速いスピードで脳に届きます。こうして、タバコを吸うと手っ取り早くドーパミンが放出され快感が得られるので、いつしかタバコに依存してしまうようになるのです。

こうして、本来人間の体には存在しないはずのニコチンがドーパミン放出を支配し、さらに、ドーパミンが出たあとに分泌されるセロトニンも、ニコチンの影響を受けてしまいます。その結果として、ニコチンがないとドーパミンやセロトニンが出にくい体になってしまうのです。

逆にいうと、タバコに変わるほかの自然な方法でドーパミンやセロトニンを出せるようにすれば、ニコチン依存症の魔の手から逃れられるということになります。

どうしたら自然にドーパミンが出るようになるのでしょうか? 私がいちばんおすすめするのは、「運動すること」です。近年の研究で、運動すると、禁煙に直接的によい効果があることがわかってきました。

『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(ジョンJ.レイティ エリック・ヘイガーマン著 野中香方子訳 NHK出版)では、運動をすると、吸いたいという強い気持ちが50分間抑えられ、タバコの本数が減るという研究結果が紹介されていました。さらに、激しい運動であれば、たった5分でも効果があるそうです。

激しい運動でなくても、ゆっくりと走るジョギング程度でかまいません。まずは、1日5分、家のまわりを走ることでもいいのです。

また、人から褒められたり、自分を自分で褒めたりするのも、ドーパミン放出にとってよい方法です。

一方のセロトニンを自然に分泌する方法としておすすめなのが、「朝、日光を浴びること」と「リズム運動」(リズミカルな運動で、ウォーキングやジョギング、簡単なステップなど)をすること。「朝日を浴びながらジョギングをする」というのは、この両方を取り入れられる、とてもよい方法です。

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