30ヤードの練習はスイング作りのマルチビタミン

プロゴルファー&フィジカルトレーナー/石渡俊彦

 以前トーナメント会場へ出向いていたころ、調子のいい選手を見極める目安として、30ヤードから50ヤードのアプローチの“動き"を見ていました。なぜスイングではなく“動き"なのか? スイングという概念で見ると、どうしてもクラブの動きにとらわれます。一般的なスイングチェックと違って、私の場合は主に重心移動を見るため、“動き"の質を重視します。これによりゴルフだけでなく、人間の行う“動き"を解析することが可能になります。

フルスイングの場合、ある程度ゴルフをしている人は、テークバックで多少右方向へスエーしても、ダウンスイングの動きの中で微調整することが可能なため、動きのミスが結果へ出ない場合があります。しかし、30ヤードくらいの動きの少ない場合では、動きのミスを微調整する“間"があまりないために、結果に影響しやすいのです。みなさんは練習場では30ヤードのアプローチを上手く打っていますよね。しかしコース(芝)で同じように打てる人は少ないのではないでしょうか? その原因は主に三つあります。

一つ目は一見上手く打っているように感じるマットでの練習、実はダフッているのです。これは日本の多くのティーチングプロが推奨する「テークバックは低く長く上げて」がもたらす弊害です。ボールの手前4センチメートルに紙を敷いて、アプローチしてみてください。ボール手前の紙を動かしてしまう人が多いでしょう。これはボールに対してクラブの入射角度がゆるやか過ぎるからです。手首を使いテークバック、インパクトへの入射角度、ともにクラブヘッドを“上"に上げ、インパクトではボールを打つのではなく、ボール下のマット(コースでは芝)をソールでたたく感覚で打てば、改善できます。

二つ目はフィニッシュで脱力しているということ。アプローチであってもフィニッシュが存在します。このフィニッシュで止まってボールを見ることができる人はあまりいません。打った後のクラブは象の鼻のごとくダラーンと垂れ下がる。これは力がインパクトでも抜けていることを意味します。つまり、振り幅が合っていたとしても距離感はショートする傾向にあるのです。打った後はフィニッシュで3秒間静止する! 意識してこの練習をすれば、かなりの人が改善します。

さあ三つ目ですが、これはプロでも調子によってばらつきが出ます。ベルトラインを見てもらうとわかりやすいと思いますが、インパクトからフィニッシュにかけて体が浮いてしまう。この浮き動作があると距離感、振り幅によっては方向性(主に左へのミス)にも影響が出ます。これは股関節・足首といった身体機能にかかわるもので、各関節の柔軟性が必要です。

最後に、30ヤードの正しいインパクトは、ショットの改善におおいに役立ちます!

プロゴルファー&フィジカルトレーナー/石渡俊彦(いしわた・としひこ)
1965年千葉県生まれ。プロゴルファー&フィジカルトレーナー。けんこう寺子屋ゴルフスクール主宰。選手時代のケガの経験からプロトレーナーに。中嶋常幸プロの復活に貢献、高い評価を受ける。一方、若手育成やアマチュアのレッスンにも力を注いでいる。
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