休日にドッと疲れの出る人が実は危ない理由 まじめな人ほど自分を追い詰めている

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私がどん底状態だったとき、いちばん必要だったのは話を聞いてくれる相手でした。ただ、すでに感覚のスイッチを切ってしまっていましたので、自分の回復はもはや優先事項ではありませんでした。

それどころか、家計や自分の会社を取り巻く環境に感じる、大きなストレスにばかり意識が向いていたのです。予定表は会議で毎日びっしり埋まり、同時に複数のことをこなしていました。やるべきことをリストからひとつ消しても、すぐにまた別の要件で埋まっていきます。いつまで経っても仕事が終わらず、手を休める暇がありませんでした。

仕事に優先順位をつける、筋道立てて考える、ここまでと決めたらあとは断る、といったことがどんどんできなくなっていきました。完全な無力感に襲われ、ろくに眠れず、胃潰瘍になり、背中には鋭い痛みがあり、不安で仕方ありませんでした。

助けの求め方がわからなかった

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もうこれ以上無理だと感じていましたが、助けの求め方がわからなかったのです。精神科医に話を聞いてもらうなんてとんでもない、と思っていました。そんなところへ行くのはかなり心を病んでいる人だけだ、と自分に言い聞かせていたのです。

しかしあるとき通っていたジムで、誰かがスティグ・フルドの話をしているのを小耳に挟みました。スティグはスウェーデンではよく知られたメンタルコーチです。悪いうわさはなく、ずいぶん人気のようでした。

スティグに連絡をとってほどなく、自分が子どもの頃に抱えていた問題について、わたしはスティグと話し合っていました。それまで誰にも話さなかったことを聞いてもらえて、とてつもない解放感を覚えました。リラックスするエクササイズも彼から教わり、前ほどストレスを感じないようになりました。

スイッチを切ってしまえる人の厄介な点は、具合が悪いのを自覚しなくなることです。

仕事のことで頭がいっぱいだと、自分自身を意識することがなくなります。自分自身や家族にどんな思いをさせているか気づかないのです。

週末や休みが近づくと不安になります。脳がようやくひと息ついてじっくり考えられる機会なのに、むなしくなったり、胃や頭が痛くなったり、疲れをどっと感じたり、風邪をひいたりしがちです。月曜日になると、またスイッチを切ります。

ここまでくると、何かしなければならないことがあるたびに、スイッチを切ることが習慣になってしまっています。

体のあちこちが痛いのを無視し、自分のいろいろな問題を抑え込んで、意識を仕事に集中させているのです。そんな自分を止めるには、病気になって寝込むか病院送りになるかしかありません。

歯が痛ければためらわずに歯医者へ行き、車の調子が悪ければ修理工場へ持っていくのを恥ずかしく思うことはありません。それなのに心の不調となると、助けを求めるのをためらったり恥ずかしがったりします。

選択の余地がなくなってしまうまで放っておいてはいけません。手遅れになる前に、いますぐ助けを求めるのが望ましいことです。パートナーに話を聞いてもらうのも大切ですが、専門療法士の代わりにはなれません。助けを求めるのは人として当然のことです。自分の状況は自分で変えられます。

マッツ・ビルマーク インナー・ヘルス・エデュケーション代表

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まっつ・びるまーく / Mats Billmark

スウェーデン、カルマル市生まれ。起業家として働く中、自身の不安症という心の病と向き合ったことをきっかけに、心の病の研究に力を入れ始める。2011年、「インナー・ヘルス」と題した初講演をカルマル市内のホテルで行ったところ、計6回の講演がすべて満員となり大きな反響を呼ぶ。2013年にはこの一連の「インナー・ヘルス」講演をDVD化して販売。

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