北陸新幹線が結ぶ「近くて遠かった」信越の絆 東京との観光客輸送とは違うもう一つの役割

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見えてきたのは「温故知新」というキーワードだった。

上越・北陸新幹線沿線を結ぶほくほく線の「超快速スノーラビット」=越後湯沢駅・2017年7月(筆者撮影)

戦国期、上越市には上杉謙信の居城・春日山城があり、現在の飯山市など北信濃も一時、上杉領だった。地元には今も「上杉つながり」という一体感が存在する。加えて、信越県境では、里山の自然環境の保全と活用を図るロングトレイル「信越トレイル」の整備が進んでいた。さらに、同じく上杉領だった雪国観光圏エリアの十日町市や魚沼地域と上越市は、ほくほく線で直結している。北陸新幹線開業までは「首都圏への通り道」だったほくほく線が、開業後には上越地方と雪国観光圏を結ぶ鉄路となり、さらに、北陸新幹線が、近くて遠い仲だった飯山市と上越市を12分で結ぶ――。

人口減少や高齢化が進む中、この枠組みで、どんな地域の将来像や広域連携の姿が見えるか。それを探るため、北陸新幹線開業直前の2015年2月、上越市創造行政研究所が主催、愛知大学三遠南信地域連携研究センターが共催して、初の市民向けシンポジウムを上越市で開き、信越自然郷エリアにある一般社団法人信州いいやま観光局と、雪国観光圏が活動を報告した。このシンポは、新しい形の交流と地域づくりを模索する人々が互いに出会って広域連携の重要性を確認し、信越県境地域づくり交流会が始まる契機となった。

「近くて遠い」地域交流の進展

第1回交流会は2016年2月、上越市創造行政研究所が主催、愛知大学三遠南信地域連携研究センターが共催し、同市で開かれた。日本最古級の映画館・高田世界館(上越市)の支配人や、十日町市などで開催される「大地の芸術祭」運営スタッフなど20人が登壇し、「地域資源の発掘と魅力発信」「グリーンツーリズム」「田舎ならではのライフスタイル実践」「観光分野での新たな組織経営」といった切り口から、信越地域から集まった約150人と議論や交流を深めた。

「近いようで遠かった隣人の地域愛を肌で感じることができた」「近しい地域に暮らす人たちが、『同じこと』と『違うこと』の両方を見つけられ、それを持ち帰って自分たちのまちを『考える』きっかけにもなる」……参加者らの強い反響が、交流会の継続を後押しした。

第2回は年度を挟んで2016年12月、同研究所が主催、信越自然郷と雪国観光圏が共催して飯山市で開かれた。「雪国の食文化」と「インバウンド誘客の可能性」をめぐり、参加した約120人が地域資源の再発見や磨き上げ、発信方法などについて学び合った。そして今回の第3回は、初めて雪国観光圏が主催し、上越市創造行政研究所と信越自然郷が共催に回った。

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