甲子園で進撃、天理は「選手任せ」野球で強い プロ経験者・中村監督の「自由主義」指導法

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今年の高校野球「夏の甲子園」でベスト8に駒を進めた天理(奈良)。プロ野球経験者の中村良二監督(左)は、選手の自主性を重視した指導が特徴だ。次戦は8月20日、ベスト4を明豊(大分)と争う(写真:共同通信社)

かつてプロ野球と高校野球の間には高い壁があった。教員免許を取得したうえで、10年間教師として勤務してからでないと野球部の指導に携わることができない時代もあった。

しかし、2013年に学生野球憲章が改正。教員免許を持たない者でも、一定の研修を受けることで高校野球の監督になれるようになった。

プロ野球経験を持つ高校野球監督の潮流

この改正によって、高校球界は様変わりした。ここ数年でプロ野球選手だった高校野球監督が激増しているのだ。プロ野球で10年以上活躍した者、コーチやスカウトをつとめた者などが次々に高校野球に飛び込んでいる。

中には、元読売ジャイアンツの中尾孝義(専大北上・岩手)、元近鉄バファローズの羽田耕一(三田学園・兵庫)など日本シリーズを戦った元プロ野球選手が監督を務める野球部もある。この春のセンバツでは、元千葉ロッテ・マリーンズの小林昭則(帝京第五・愛媛)が監督就任わずか1年で甲子園出場を果たし、話題になった。

元プロの高校野球監督が高い技術と見識を持っていることは間違いない。だが、それだけで勝てるほど高校野球は甘くはない。

この夏の甲子園でベスト8に駒を進めた天理(奈良)を率いる中村良二監督。彼もまた、プロ野球の世界を経験している一人である。今夏の甲子園、8月13日に大垣日大(岐阜)との2回戦で初勝利をあげたときには、「母校のユニフォームを着て甲子園に戻ってこられるなんて……」と涙ぐんだ。その涙は決して大げさなものではないと思う。それほど難しいことなのだ。

中村は、1986年夏に天理が全国優勝したときのメンバーだ。その年のドラフト2位で近鉄バファローズに入団。2軍のウエスタン・リーグで史上2人目の通算100本塁打を達成した強打者だったが、1軍の壁は厚く、わずか41試合の出場、5安打、0本塁打に終わった。1997年に阪神タイガースで現役を引退。2008年に天理大学野球部監督に就任した。2014年2月に天理高校のコーチになり、2015年8月から母校野球部の監督を務めている。

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