甲子園で進撃、天理は「選手任せ」野球で強い プロ経験者・中村監督の「自由主義」指導法

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順調にベスト8まで勝ち上がり、日本一が見えるところまで来た。しかし、中村監督は自身の采配や育成方法を誇示することはしない。選手の自主性を最大限に重んじるのが、そのやり方だ。18日の試合後も、選手任せで勝てたと顔をほころばせた。

「ここまで勝ち上がったことは、うれしいのひと言。これだけの試合をすると選手は勝手に伸びるんだなということを痛感します。僕は試合中、ほとんど采配もせずに、タイムをかけただけ。彼らが頑張ってこの結果をつくってくれました」

そうは言っても、ほったらかしにするのとは違う。大事なのは、きっかけ一つで大きく成長する高校球児たちに「ひと言」ヒントを与えること。

「僕は手取り足取り指導するタイプではなくて、ひと言かふた言、ポッと投げかけるくらい。選手に課題を与えて、どうするかを遠くから見ています。コーチ、スタッフがまとまってやってくれるので、僕はでしゃばらなくてもいいかな」

「最後は本人たちの感覚に任せる」

野球は選手がやるもの。だから、決断するのはあくまで選手というのが、中村監督のスタンスだ。

「アドバイスはしますが、最後は本人たちの感覚に任せています。変えることを嫌がる選手に無理強いはしません。ただ、どう見てもこっちのほうがいいだろうというときには、何度も何度も言うようにしていますけどね(笑)」。

次戦は8月20日、ベスト4を争って明豊(大分)と激突する。明豊は8月18日の神村学園(鹿児島)との3回戦を延長12回の劇的なサヨナラ勝ちで制してチームが勢いに乗っており、好勝負が期待される。

天理が全国優勝を果たしたのは1997年のセンバツが最後。夏の甲子園となると、1990年までさかのぼる。春夏合わせて優勝3回の名門にかかる優勝の期待は大きい。だが、指揮官はあくまで自然体でチームを見守り、目の前の試合に臨むつもりだ。

(文中一部敬称略)

元永 知宏 スポーツライター

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もとなが ともひろ / Tomohiro Motonaga

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。直近の著書は『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、同8月に『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)。19年11月に『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長。

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