36歳「売れない女優」が狙う芸能界復帰の道 現実に折り合いをつけながら「夢」は続く

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「年齢のサバを読んでも30歳を過ぎていたのでアイドル活動なんてやりたくありませんでした。事務所も思うように動いてくれず、芸能の仕事はどん詰まり。子どもを産む夢を捨ててまで続けるのは難しいと思いました」

里穂さんと賢二さんは結婚して新婚旅行に出かけた。その翌月には妊娠がわかり、今年の春に無事に出産。里穂さんによれば、賢二さんは理想的な夫だという。

「出産の前後で9日間の育児休暇を取得していろいろ気遣ってくれました。料理以外の家事はできる人で、掃除などは率先してやってくれます。残業もしなくなり、急いで帰ってきて娘を引き受けてくれるんです。楽しそうにおむつを替えていますよ。どうやったら上手におむつを替えられるかを研究することに没頭しています」

在宅でも可能な脚本書きに挑戦

20代のすべてと30代の前半を捧げた女優への道をあきらめた、とは里穂さんは思っていない。事務所は辞めてフリーになったので、知り合いの監督に連絡を取り、いつでも復帰できるように狙っていると里穂さんは明かす。

「独身時代に売れていないと、ママ女優として面白がってもらうことは難しいです。赤ちゃんには一定の需要があるので、うちの子が必要だったらいつでも言ってくださいと監督さんには声をかけています。ついでに私も出演させてもらうのが狙いですけど」

何も知らないわが子をきっかけに使うのかと一瞬驚いたが、芸能界はそれだけ競争が厳しい世界なのかもしれない。

「でも、子どもを産む前に比べると戦闘意欲が下がっているのを自分で感じます。妊娠中も体がつらくて何もする気が起きませんでした。気持ちもすっかり丸くなっちゃって、これでいいのかな、と思うことはあります。(女優の)友達がオーディションを受けるのを聞いたりすると、私も行きたいなあと羨ましくなったり……」

もともと活力にあふれている里穂さんは落ち込みすぎることはない。早くも新たな道を模索中だ。知り合いの監督から勧められて、在宅でも可能な脚本書きに挑戦している。演技もできる脚本家として売り込むつもりらしい。書き手としての営業ノウハウを教えてほしい、と筆者に逆質問してきた。里穂さんはとにかくガッツのある女性なのだ。

夢に向かって邁進する20代。30歳を過ぎると現実と自分の限界が少しずつ見え始める。そして、35歳あたりで「自分も老いていくのだ」と悟り、結婚や子育ても真剣に考えるようになる。しかし、夢を捨てたわけではない。自分がやりたいこととやれることの折り合いをつけ、形を変えて実現することも可能なのだ。里穂さんが脚本を手伝ったドラマが放送される日は近い気がする。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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