「歯のレントゲン」は何回までやっていいのか 放射線の安全性と患者がすべきこと

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バイトウイング(咬翼)法レントゲン
放射線被曝量が比較的少なく、視診では見つけることのできない歯と歯の間の虫歯を発見するのに役立つ。肉眼で見つけられるほどの虫歯なら、根管治療が必要かもしれない。フイルムを固定する羽のような形の器具を歯でかみ合わせることから、この名前がついた。
パノラマレントゲン
特別な装置で患者の顔の周りをカメラが回り、歯全体と表には出ていない骨を一度に撮影することができる。抜歯や矯正をする際に行われることが多く、バイトウイングを4回行ったときの3~4倍の被曝量がある。
歯根レントゲン
一度に3~4本の歯を根っこまで映す。感染や中年期に発症しがちな根っこの虫歯が原因でウミがたまっていないかを調べることができる。フィルムは口の中に垂直に設置し、できるだけ歯に近づけて撮影する。米国歯科放射線学会議の代表を務めるサンジェイ・マリヤによると、放射線の被曝量はバイトウイングと同程度だという。
歯科用コーンビームCT(CBCT)スキャン
歯とその根っこ、あごの画像を3Dでとらえることができるが、放射線の被曝量は従来の歯科レントゲンよりも多い。米国食品医薬品局(FDA)は、CBCTスキャンは放射線の被曝量がより少ない別の方法が適用できないケースで臨床情報を提供する場合に限ってのみ実施すべきだと警告している。

レントゲンによる子どもの被曝を減らすべき

歯科医を初めて訪れると、患者は治療の前に状態を確認するためレントゲンを撮ることを勧められるが、歯科医師会は複数の選択肢について明示している。1つは奥歯のバイトウイングとパノラマレントゲンを撮ることだ。もしくは、懸念される箇所のバイトウイングと歯根レントゲンを複数撮ることもできる。

だが歯科医師会は、すべての歯のバイトウイングと歯根レントゲンを伴う歯全体の撮影は、広範囲な治療経験のある患者もしくは虫歯が多数ある患者に限られるべきだとしている。

初診の後に、成人がどれだけ頻繁にレントゲンを撮るべきかは患者それぞれの治療歴による。虫歯の高いリスクがあったり歯に黒い点や穴が開いたりしている場合は、1年半ごとにバイトウイングを実施したほうがいい。一方で、虫歯がほとんどないか、虫歯の兆候が見られない場合は、2~3年に1度にすべきというのが歯科医師会の見解だ。

米国歯科放射線学会議のマリヤは、虫歯の診断など定期的な検診のためにCBCTスキャンを行うことは、「絶対に推奨できない」と言う。

細胞分裂がより盛んな子どもは、大人よりも放射線の被害を受けやすい。そのため、レントゲンによる子どもの被曝を減らすべきとの声が高まっている。

多くの親は、コストや不安感、放射線被曝のおそれから子どもにはできるだけ歯のレントゲンを受けさせたくないと考えている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の放射線学准教授でもあるマリヤは、「単に最小限しか行わないといっても懸念は薄らがない」と言う。それよりも彼が強調するのは、「患者に安心感を与える」というレントゲンによる診断のメリットだ。

とはいえ、歯科医はどんなレントゲンでもその重要性を根拠とともに示すべきだ。「歯科医に『これらすべてのレントゲン撮影が私に必要な理由について具体的にどうお考えですか?』と尋ねるといい」と歯科開業医のダークスは言う。「もし歯科医が、それが当院のやり方だと答えたら、それは十分な答えとはいえない」。

(執筆:Catherine Saint Louis記者、翻訳:中丸碧)
(C)2017 The New York Times News Services 

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