原油価格の急落にもかかわらず、ロシアは経済危機を免れている。だが、その先行きはプーチン大統領が5年前に考えていたほどには明るくない。
2012年にモスクワで行われた会議で、プーチン大統領がノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏とともに登壇したとき、「1998年のロシア危機は遠い昔の思い出のようだった。原油価格は1バレル=100ドルを優に上回り、国庫は潤沢だった。西側の民主主義国家はリーマンショックにまるで対処できていない」とのクルーグマン氏の見解を聴衆に聞かせ、プーチン氏は悦に入っていたに違いない。
原油価格はピーク時から急落
一方、別の会議では、ロシアの経済学者グリエフ氏(後に亡命)が、司法などの制度が脆弱なままでは、資源輸出依存のロシア経済が変わる望みはないと主張していた。あまりに多くの決定が1人の人間によって行われていたからだ。同じ会議で私は、大規模な改革が行われないかぎり、エネルギー価格の急落は深刻な問題を引き起こすことになると力説した。
かくして、原油価格は暴落した。現在の市況(7月上旬時点で50ドル以下)ですら、2011〜2012年ピークの半分に届かない。輸出の大半を石油と天然ガスに頼っている国にとっては大打撃だ。
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