いすゞが「巨大ミュージアム」を開業したワケ

子どもたちが夢中!最新鋭ジオラマを披露

ミュージアムの実現に向けて動き出したのが、2014年のことだ。当時の細井行社長(現会長)は、社員のモチベーションにつながる取り組みの必要性を感じていた。業績が好調だったこともあり、経営陣が「みんなで一丸となってやって欲しい」と背中を押してくれたという。

広報やCSRの担当者らが招集されて企画が立ち上がったが、中尾氏は「普通のミュージアムでは意味がない」と強く主張した。「トラックやバス、エンジンは社会の脇役。ただのミュージアムにはないインパクトや、より深く理解してもらうための工夫が必要だった」(中尾氏)

100人以上の社員の知恵を結集させた

ミニカーをずらりと並べた「いすゞ年表」(記者撮影)

トラックメーカーであるいすゞ自動車を、一般の消費者にどう知ってもらうか――。ほぼすべての部署を回り「どんな仕掛けがいいと思うか」「何を押し出したいか」を聞いてまわった結果、総勢100人以上の意見が取り入れられた。「自分のかかわった企画が展示されていたら、ここに来るたびに誇らしい気持ちになり、モチベーションにつながる」。中尾氏はそう確信していた。

ミュージアムの目玉であるジオラマには、特にこだわった。完成度を高めるため、中尾氏は数々のジオラマミュージアムを取材。日本の鉄道博物館や、ドイツ・ハンブルクのミニチュアワンダーランドにまで足を運んだ。構想に1年、制作には2年の歳月を費やした。

これだけのこだわりを詰め込んだいすゞプラザだが、入館料は無料だ。中尾氏は「そうですよ、社会貢献なので」と誇らしげにほほ笑む。思いの先にいるのは、子どもたちだった。

「ただモノが並んでいたり、文字で読んだりするだけでは、子どもたちにはつまらない。来てくれた人の記憶や気持ちに残るには、実際に見てさわって、遊んでもらう仕掛けが欠かせなかった」(中尾氏)

かつていすゞが製造していた伝説の乗用車「117クーペ」(記者撮影)

いすゞプラザを通して中尾氏が願うのは、子どもたちに自動車産業に興味を持ってもらい、後進として育ってもらうことだ。日米欧に加え、トラック業界では中国勢も力をつけている。世界的に競争の激しくなるこの産業の未来を考えたときに、後進を育てることは重要だ。

子どもたちに「ワクワクしたな」「また来たいな」と思ってもらい、楽しい思い出としていすゞや車のことを好きになった彼らが、将来自動車産業の門をたたくことになるかもしれない。

夏からは、学校の社会科見学やミニトラックの工作が体験できるワークショップの受付も開始する。訪れた子どもたちに、自動車産業の未来を担う”ドライバー”になってほしい。こだわりのつまったいすゞプラザには、そんな期待も込められている。

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