「解雇の金銭解決制度」が是か非かという議論が話題になっています。これは、労働者が解雇された際に、これを「月例賃金の○カ月分」などの金銭を支払うことにより、裁判所などで紛争化せず解決する制度です。
現在の法律では、解雇紛争の場合、解雇が有効か、無効かということのみが裁判で争われることとなり、金銭解決を裁判所が命ずることはできません。金銭解決は和解手続きにより労働者と会社が合意した場合のみ、事実上行われているにすぎないのです。これを、法律上の制度にすることが検討されています。
厚生労働省の「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が5月末に報告書をまとめました。「解雇の金銭解決制度」は、今後、厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会で議論されていくとのことです。「解雇の金銭解決」は経営者が安易な解雇を乱発したり、「カネさえ払えば解雇できる」ので労働者には不利との批判もあります。
金銭解決制度により本当に救われる人と、困る人
しかし、本当にそうなのでしょうか。「解雇の金銭解決反対!」という人は、実は既得権を守っているだけではないでしょうか。逆に、金銭解決により救われる人について考えたことはありますか。
そこで、今回の記事では、金銭解決制度により本当に救われる人、困る人は誰なのか、という点をじっくり考察してみたいと思います。
現実の数字を見てみましょう。解雇・自己都合退職・会社都合退職などによる年間離職者は約713万人(平成27年雇用動向調査)ですが、そのうち解雇による離職は100人に1人です。1%と仮定しても約7万人が解雇されています。その一方で、裁判所での解雇裁判・労働審判は、3000件に満たない程度しかありません。つまり、解雇されたほとんどの人が、裁判手続きを利用していないことがわかります。
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