東京人でも意外と知らない「東京の森」の現状 東京の面積の約4割を森林が占めている

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手入れされている多摩の人工林。良質な木材は原木市場で売買され、主に建築用に使われる(写真提供:東京都)
東京の面積の約4割を森林が占めているのをご存じだろうか。そして今、多摩地域の人工林の5割以上が収穫期を迎えている。東京都では、こうした木々を計画的に伐採し、多摩産材として利用促進する事業を2006年から行ってきた。身近にありながら意外と知られていない東京の森林の現状と、多摩産材の活用事例を紹介する。

森林の循環を促す多摩産材とは?

本記事は『東京人』2017年8月号(7月3日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

東京は、実は世界的にも珍しい自然に恵まれた都市である。1000万人以上が暮らす大都市でありながら、その面積の約4割は森林。多摩地域には、約5万3000ヘクタールの森林が広がり、その5割以上が人工林で構成されている。さらに島嶼(とうしょ)地域には、天然林を中心とした約2万6000ヘクタールの森林がある。東京都は現在、こうした都民の財産を次の世代へと伝えていくため、積極的に森林の管理に取り組んでいる。

背景には、林業の衰退と森林の荒廃がある。第2次世界大戦後に増大した木材需要に応えるため、1950年代、日本各地で天然林の伐採跡地や原野に人工林が植栽された。多摩の森林にも、この時期に多くのスギ、ヒノキが植えられた。国策として進められた拡大造林はしかし、その後多くの問題を引き起こすことになる。1964年に外国産の木材の輸入が本格的に始まると、安価かつ大量ロットで供給可能であることから、輸入量が年々増加。その影響で国産材の価格は落ち込み、採算がとれなくなった林業従事者たちが次々と林業を離れていった。都内の林業従事者も、1960年には2000人を超えていたが、2005年には約100人に。木材の国内自給率は1970年には5割を下回り、2000年には2割を切った。

間伐や伐採などの手入れが行われなくなった森林は、荒廃が目立つようになる。木々が密集し地面に日光が当たらなくなると、下草が生えず、土がむき出しの状態に。大雨が降ると、この土が雨水と一緒に流れ、土砂崩れが起こりやすくなった。また、人工林の二酸化炭素吸収能力は20年を境に低下するため、温暖化防止機能も低下。さらに、成長したスギは大量の花粉発生源となった。

次ページ今が収穫期! 育てる時代から伐採して利用する時代へ
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