東京の「土木地形散歩」は最高におもしろい 現在の東京の骨格は江戸時代のインフラだ
千鳥ヶ淵―貯水のため江戸のダム湖を横断する首都高速
皆川:千鳥ヶ淵は、江戸時代初期に飲料水を確保するためにつくられたダム湖。麹町の台地を流れていた自然の沢に土を盛って堰き止めて、水を溜めた人工湖です。もともとは局沢(つぼねさわ)と呼ばれ、蓮池濠を流れて日比谷の入り江に注いでいた。
北河:地形的には、見た目もダムですね。
皆川:千鳥ヶ淵へはみな、花見目的で出かけますが、実はダム湖観光でもあります(笑)。徳川家康が江戸入府後にやらねばならなかったのが、飲み水の確保。なぜなら海が近く、井戸を掘っても真水が得られなかったから。そこで土木工事で完成させたのが千鳥ヶ淵と牛ヶ淵。皇居の濠は桜田濠や大手濠など「濠」の名で呼ばれていますが、この二つだけが「淵」なのはそのためです。
陣内:もともとあった水辺を、人工的に利用しようということですね。
皆川:貯水以外にはもちろん江戸城防御の目的がありますが、現代はそこに首都高が絡んでいるところが景観的には都会的でユニークですね。
北河:形としては、ダムの周りの斜面が急勾配ですよね。土質や盛土と切土の違い、また防御施設という事情もありますが、明治時代の緩勾配の土構造物とはずいぶん違う印象です。