タカタ、破綻でも開き直る経営者の重い責任 「何が悪かったんだろう」と高田会長兼社長

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時間が迫る中で最後まで埋まらなかったのが、再建の手続きをめぐる意見に関するタカタとスポンサー、自動車メーカー、銀行などとの間の深い溝だ。

複雑に利害関係が絡み合う今回のケースを、関係者それぞれとの協議に基づき進める私的整理が難しいのは明らか。裁判所の管轄下で公平かつ透明性のある法的整理が現実的だった。だが、タカタ側が安定供給のために私的整理を希望し、スポンサーなどが提案する法的整理を最後まで飲み込まなかった。

信用不安が法的整理の引き金に

今月16日以降、民事再生法の適用を申請するとの報道が相次ぎ、部品の仕入れ先や出入り業者との取引条件が悪化。主要な従業員の離職懸念が高まったうえ、金融機関の融資姿勢も厳しくなってきたことで、法的整理の方針を固めた形だ。

法的整理により部品の安定供給が滞ると指摘してきたタカタだが、実際は、メインバンクの三井住友銀行は250億円を上限とするDIPファイナンスでタカタを支援することで合意。日系自動車メーカーらも民事再生手続きの期間中の資金繰り支援を提供するため、民事再生法の手続きの中でも部品の安定供給への準備が整いつつある。

私的整理にこだわる理由は何だったのか。「経営者の立場よりも(6割の株式を握る)大株主としての地位を優先したのではないか」。記者の質問に高田重久会長は、「そういうことは一切ない。安定供給以外で、何らかの条件をつけてほしいという要望は言っていない」と一蹴した。

「安定供給」を建前に、早期決着を図る選択を誤ったのではないか。その経営者としての責任をどう感じているのかの疑問は終始、晴れなかった。高田会長はKSSへの事業譲渡が完了するまで経営トップにとどまる。とはいえ、再建までの期間を長引かせた責任は重い。

今日6月27日には当初の予定通り、定時株主総会が開かれる。上程される議案の一つは、現取締役6名の再任だ。創業家が議決権の6割を握るため可決される可能性は高い。ただ、民事再生手続きの中でタカタは債務超過に陥り、株式は無価値にすることが前提となっている。株主からは厳しい声が飛びそうだ。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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