タカタ、破綻でも開き直る経営者の重い責任 「何が悪かったんだろう」と高田会長兼社長

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タカタの負債は今年3月末時点で約3800億円。だが最終的な総額は現段階で未定だ。これまでに自動車メーカーがタカタに求償した債権は、自動車メーカーが引き当てたリコール費用のごく一部にすぎない。

自動車メーカーとタカタの間で責任分担を巡る協議は続いており、大半のリコール費用は自動車メーカーが肩代わりしたままだ。この巨額費用の負担の行方は、民事再生法の手続きの中で確定される。自動車メーカーが債権を届け出た時点で、タカタの負債総額は1兆円を超えるとみられる。

新生タカタは中国企業の実質傘下に

スポンサーには、外部委員会により候補に選ばれた中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカー、キー・セーフティー・システムズ(KSS)が就くことで基本合意に至っている。KSSはエアバッグやシートベルトなどタカタの持つほとんどの事業を約1750億円で買い取り、2018年の第1四半期中をメドに新会社に移行する。ただし、硝酸アンモニウムを使うインフレーターの製造・販売事業は、KSSは引き継がない。

そうして残された事業を引き継ぐのが、旧タカタだ。受注残やリコールの代替品として必要な硝酸アンモニウムを用いたインフレーターを製造する。旧会社は2020年3月までに必要分の製造を完了し、その後、清算する方針だ。

インフレーターの不具合が出始めたのは、10年も前にさかのぼる。2008年11月以降、自動車メーカー各社は不具合の有無やその原因を調査するためにリコールを実施し、対象範囲が徐々に拡大してきた。

2015年6月の記者会見。一連のリコール問題が顕在化して以降、初めて高田重久会長が公の場に出てきたのがこのときだった。中央が高田会長(撮影:尾形文繁)

膨らむリコール費用に経営が圧迫されたタカタは、2016年2月に外部専門家委員会を設置。当初の計画では、2016年末には再建案の策定を終えるはずだった。

再生への道筋が定まるまでに予定よりも半年遅れたことについて、高田会長は、「10社以上の自動車メーカーの合意を取り付けるためには、われわれの想像を超えるプロセスが必要だった」と説明。スポンサー選定を巡っても、自動車メーカー各社が合意するまで難航した。

ステークホルダーの多さから混迷したタカタの再建だが、一連のリコールに関連する米司法省への補償金の支払いの期限が、2018年2月に迫ってきていた。KSSから事業の売却額が払い込まれる時期から逆算すると、現時点でも残された時間はほとんどなかった。

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