「スッキリ熟年離婚はおトク」は本当なのか 「慰謝料は多い人でも300万円」が現実

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私はいつも老後の三大不安は、「貧困」「病気」「孤独」だと言っています。熟年離婚することによって老後ビンボーに陥るということは憂慮しなければいけないことですが、私はむしろそれ以上に恐ろしいのは「孤独」に陥ることだと思います。

熟年離婚よりも怖いのは、高齢離婚

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別に離婚しなくても、サラリーマンは会社を定年になった後、友達も少なく、家族にも疎まれて孤独に陥るということが起こりがちです。ましてや、60歳を過ぎてから1人になってしまうというのは、死別であればやむをえないでしょうが、離婚によるシングル化はできるだけ避けたいところです。

特に熟年離婚は長年不満を抱き続けた女性の側から切り出されるケースも多いため、離婚後は元気になる女性が多い反面、男性は一層落ち込んでしまうことになりがちだといわれています。

そうならないようにするためには、ひと頃よくいわれた“ぬれ落ち葉”族にならないようにすることでしょう。

夫も妻も60歳以降も、できれば仕事を続けたほうが良いと思います。最近ベストセラーになったリンダ・グラットン氏の『ライフシフト』でも人生100年時代の到来といわれています。

60歳で完全リタイアするのも良いですが、働けるうちは夫婦共に働いたほうが、経済的にもコミュニケーションのうえでもメリットは大きいと思います。現役時代の熟年離婚も避けたほうが良いのですがもっと恐ろしいのは定年後しばらく経ってからの高齢離婚でしょう。高齢期になっての孤独というのは心身ともに大きなダメージを与えることは間違いありません。

人生の晩年を暗くみじめにおくらないようにするためにも、夫婦や友人とのコミュニケーションを大切にし、ほどほどに働き続けることがベストな方法といえるのではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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