大林組が配当より内部留保「貯蓄」に励む理由 ゼネコン各社は「冬の時代」への備えを進める
内部留保(利益剰余金)を倍増、自己資本比率40%(現在29.5%)、借金は実質ゼロ――。
売上高でゼネコン首位に君臨し、都心の再開発やインフラ工事をはじめ旺盛な建設投資を背景に業績拡大が続く大林組。3月に発表した新たな中期経営計画では、2021年度の数値指標として冒頭の数字を掲げた。
大林組は従来、中期経営計画で売上高や営業利益など、損益計算書上の目標値は公表していたが、バランスシートの項目で将来指標を出したのは初めて。同社幹部は「『一定の利益水準と投資を達成すれば、これくらいはいける』という目安の数字であり、目標ではない。5年後、より高い企業価値を持っていることを示す一つの材料になる」と説明する。
一方、株主還元については「内部留保の充実を勘案の上、業績に応じて実施」とし、従来の配当性向20~30%という方針を据え置いた。
ゼネコン各社、「内部留保の確保」に走る
2017年3月期も大手や準大手を中心に多くのゼネコンが過去最高純益を更新した。大林組以外にも、長谷工コーポレーションや戸田建設など、この春新たにスタートしたゼネコン各社の中期経営計画には「内部留保の確保」の文言が躍る。積み上がるキャッシュの使い道として、内部留保の充実が選ばれているのだ。
ある準大手ゼネコン幹部は「最優先はこれまで毀損してきた内部留保をためること。この先を考えた投資も重要だが、さらなる株主還元は現時点で考えていない」と話す。
定義にもよるが内部留保は一般的に利益剰余金を指す。利益剰余金はこれまでの当期純利益の合計で、配当の原資となる。財務省の2015年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除く企業が蓄積した内部留保の合計額は377兆8689億円に達した。
稼いだ純利益を内部留保として積み上げるのか、配当・自己株買いなどの株主還元に回すのかは、どの上場会社の経営者も悩む問題だ。
最近では、2015年から東京証券取引所がコーポレートガバナンスコードを適用していることもあり、自己資本を使っていかに効率よく利益を稼ぐかを示すROE(株主資本利益率)は、投資家が重視する項目の一つとなった。同じ利益水準でも、内部留保を含む自己資本を減らせば、ROEの値も上がるため、株主還元を強化する会社が増えてきている。
こうした時代の流れに逆行して、ゼネコンが内部留保をためるのにはそれなりの訳がある。
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