日本流「過剰サービス」は誰も幸せにしない 「カネを取れないサービス」は本当に必要か

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結論を先に言ってしまえば、日本では消費者の側から見れば非常に便利なサービスが、労働生産性という点では問題含みである、という事例が多く見られるということです。

そのサービスは行き過ぎではないか

先ごろ、宅配便事業のヤマト運輸がインターネット通販の荷物の急増と人手不足に耐えかねて、荷物の総量抑制と値上げを発表して話題になりました。

最近のネット通販は注文から配送までの時間が以前より短くなり、昼に注文した商品が夕方に届くこともあります。宅配便業者は留守だった家には何度でも来て、無料で再配達に応じてくれます。

こうしたサービスが生産性を引き下げ、人手不足に拍車をかけていると言えます。

外食産業には牛丼チェーンからファミリーレストランまで、お客の少ない深夜も含めて24時間営業している店がかなりあります。それらは深夜営業をなくすだけで、その時間に配置する人手がいらなくなり、1人当たり、1時間当たりの労働生産性を高めることができるでしょう。

小売業界では、かつては正月三が日に休業する会社が多かったのですが、年を追って休業日が短くなっていき、ついには元旦から開店する店も現れました。

ガソリンスタンドを見ると、最近はセルフ化されたスタンドも増えたものの、有人のスタンドでは、車が入ると4人ぐらいのスタッフが駆け寄ってきて一斉に窓を拭き始める、といったサービスもまだあるようです。

アメリカ人の友人は、駆け寄ってきたスタッフを見て「強盗が来たと思って逃げ出した」と話してくれました。

金融業界では、たとえば投資信託が問題になっています。日本の投信の設定本数は6000本近くに上り、一見、いろいろな種類から選べるように見えます。

しかし、1本当たりの残高をアメリカの投信と比べると、日本が160億円であるのに対して、アメリカは19億ドル(約2300億円)という大きな差があります。

1本当たりの残高が少ないことは、運用が非効率になる、手数料が割高になる、といった問題につながります。日本では投信の運用会社自身の収益性も低いし、投資家もそれほど儲かっていないのです。

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