「日本のバブル」とは、いったい何だったのか

バブルが発生するための「2大原則」とは?

『週刊東洋経済』の特集は、証券(元野村證券の横尾宣政氏と元大和証券の十亀博光氏が対談されている)、銀行、不動産、金融行政、さらにバブルで深手を負った大企業、そして社会風俗に及ぶ広範なものだが、投資・運用については、十分カバーされていない面がある。

筆者は、バブルの勃興と崩壊の両方の時期を主にファンドマネージャーの仕事をしながら、マーケットに関わって過ごした。マーケットの状況、資産運用業界の様子、一金融サラリーマンとしてのバブルとの個人的な関わりについては、「僕はこうやって11回転職に成功した」(文藝春秋。2002年5月)という書籍にかなり細かく綴ったのだが(転職がメインテーマの本だったが、裏テーマはバブルの記録だった)、折悪しく、この本は現在、版元在庫切れの状態だ(加筆して電子書籍で復刊したいと思っているが、しばしお待ち頂きたい)。

当時のバブルを理解する上で重要だと思う点を一つ補足しておく。

今回の『週刊東洋経済』の対談で、十亀博光氏が「信託銀行にも取引一任勘定と同様のファンドトラスト(ファントラ)があったのに、土田(正顕・大蔵省銀行局長)さんが国会で『ファントラは元本補填契約も利益補足(利益補填)契約も締結できない』(1991年10月の参議院証券および金融問題に関する特別委員会)と言ったので銀行は助かってしまった」と言ったのに対して、横尾宣政氏が「ある化学会社で『野村は絶対に保証商いはしません』と言ったら、住友信託銀行の役員が7%保証で社判を押した紙が出てきた」と応じている。

バブル発生の「2大原則」とは何か

実は、ファントラでは、当時「握り」と称された運用利回りを保証する約束が広く行われていた。そして、信託銀行は、顧客のファンド間で損益の付け替えをしながら(金庫番が泥棒しているようなものだが)、辻褄合わせを目指しつつ運用受託を拡大し、顧客の運用資金には、しばしばバックファイナンスを付けた(例えば「運用するおカネを貸します。貸付金利よりも0.1%高い運用利回りを保証します」といった条件を呈示した)。

顧客にとっては、信託銀行を信用できれば、「確実に儲かる運用話」だ。そして、複数の大手商社をはじめとして信託銀行を信用してファントラにおカネを流し込み、その後のバブル崩壊で残念な結果となった。

信託銀行のファントラには、(1)バブルは借金で投資が過剰に拡大することによって起こる、(2)過大な投資につながるリスクの過小評価(例えば、信託銀行の「握り」を「ノーリスクだ」と思い込む)が背景に存在する、という「バブル発生の2大原則」が凝縮されている。

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