国民には疑問だらけ、安倍首相の「改憲」提起

自民党内で真剣な議論ができない状態も露呈

安倍首相は8日の衆院予算委員会で「読売新聞に相当詳しく書いてある。熟読して」と答弁。9日、民進党の蓮舫代表は「国会で話さないのは責任放棄」と問題視(写真:つのだよしお/アフロ)

安倍晋三首相が5月3日の憲法記念日に、憲法第9条などの憲法改正を2020年までに施行という期限付きで提起し、憲法改正問題が突然、政界のホットなテーマとなっている。

安倍首相は憲法改正に熱心だといわれる。2013年には憲法改正の発議に必要な衆参両院での3分の2以上の賛成という要件を2分の1に引き下げる第96条の改正を打ち出した。しかし、「姑息(こそく)なやり方だ」などと評判が悪かったため、1年後に引っ込めてしまった。今回は第9条という核心部分を取り上げ、かつ期限を区切っていることからすると、「96条改憲」よりは本気のように見える。しかし、今回の「問題提起」も数多くの疑問がある。

「自衛隊は合憲」が政府見解なのに、なぜ?

まず、「なぜ、今なのか」という点だ。通常国会の最中であり、連休明けの後半国会は与野党が激しく対立している「組織的犯罪処罰法改正案」などの審議が控えている。そもそも安倍政権は内政では財政再建、社会保障制度改革、景気対策、各種の規制緩和、外に目を向けると北朝鮮の核・ミサイル問題、中国や韓国との関係改善、トランプ政権との通商交渉など数多くの課題に直面している。どれひとつとっても政府が総力を挙げて取り組むべき課題ばかりだ。憲法改正がこれらの課題以上に緊急性を要するとはいえない。

2つ目は、なぜ「第9条改正」なのかという点だ。首相は憲法学者の主張を踏まえ、「違憲の疑いを指摘されている現状を解消したい」と説明している。しかし、自衛隊について政府は現行憲法でも「合憲」であると解釈し、国会は「合憲」を前提に数多くの法律を成立させている。最高裁はこれまで自衛隊を「違憲」とした判決を1度も出していない。さらに国民の多くが自衛隊を認めており、マスコミの世論調査も近年は「自衛隊が合憲か違憲か」という質問はほとんどしなくなっている。そんな状況で、「憲法学者」の違憲論を理由に憲法改正するというのは説得力に乏しい。

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