フランスが国際テロの標的になる3つの理由 政治学者ジル・ケペル氏の分析とは?
刑務所がジハード運動を生み出す大きな培養器に
――『グローバル・ジハードのパラダイム――パリを襲ったテロの起源』(日本語版は6月26日発売予定、版元は新評論)のオリジナル・フランス語版は2015年末に出版された。この年の11月に起きたパリ大規模テロを予測していたかのような出版となったが。
11月13日にテロが起きることを知っていたわけではない。しかし、なぜフランスでテロが多発するようになったのかについてここ3年ほど調査をしていたので、パリ・テロには驚かなかった。
新刊では、フランスのジハード(イスラム教の聖戦)運動がいかに醸成され、それが中東情勢とどう結びついているのか、2005年以降、欧州が西側諸国の弱点となっていること、またイスラム教自体がどのようにフランスで展開していったのかについて、深く分析した。
フランスのテロの状況を理解すれば、世界各地でなぜイスラム系テロが起きているのかを理解できると思う。フランス語版は2015年時点の話だったが、英語版と日本語版は昨年12月、ドイツのクリスマスマーケットで発生したテロを含めアップデートされている。
――「2005年以降、欧州が西側諸国の弱点となった」というが、この年に何が起きたのか。
いくつかの偶発的な出来事があった。この年、(イスラム過激集団「アルカイダ」の一員)アブ・ムサブ・アルスーリが『地球的なイスラム主義の抵抗への呼びかけ』(A Call for Global Islamic Resistance)と題する本をネット上にアップロードした。神の名において攻撃を行うことを若者たちに呼びかけた。イスラム過激集団「アルカイダ」はヒエラルキー型で上から指令を出す形だったが、こちらは下からの、ボトムアップ方式での運動だ。
同じ年にフランス各地で若者を中心にした大規模な暴動が発生した。暴動がすぐにテロに結びついたわけではない。テロ計画は刑務所で育まれた。刑務所はジハード運動を生み出す大きな培養器となった。
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