日本銀行はインフレ目標を2%に設定しているが、なぜ2%が望ましいのかについては明確ではない。2013年1月に公表された「金融政策運営の枠組みのもとでの『物価安定の目標』について」の資料の中では「先行き、物価が緩やかに上昇していくことが見込まれる中にあって、2%という目標を明確にすることは、持続可能な物価上昇率を安定させるうえで、適当と考えられる」と書かれているのみである。また、黒田東彦総裁は2%の目標について「グローバルスタンダード」と説明することが多い。
いっこうに2%の目標が達成されない中、この目標が「高すぎる」という認識が一般には広がっているように思われるが、一方で「何%程度がよいのか?」に対する明確な答えがないことも事実である。
この点に関して、2017年3月に筆者も参加しているプロジェクトが主体となってWebアンケート調査(Web調査会社に登録する個人投資家を対象、有効回答者数は1218人)を行った。その結果を『個人投資家が好ましいと考える物価環境と将来の物価変動率予想の関係』というワーキングペーパーにまとめ、4月に発表した。
この調査は株式などの個人投資家を対象としたものであることは考慮する必要があるものの、結果を通じて個人や家計が考える「好ましいインフレ率」について議論することができるだろう。
「好ましいインフレ率」の具体的な数値
家計や個人に「好ましいインフレ率」を具体的に聞くことは、かなり野心的な試みといえる。それは「物価観」や「インフレ予想」の具体的なイメージのある個人はそれほど多くないと思われるからである。
今回の調査では、この点に関して「好ましいインフレ率は何%だと思いますか?」と直接的な設問は設定せず(回答者が適当に選んでしまう可能性を排除するため)、さまざまな物価環境(毎年プラス1%、毎年プラス2%など)を設定して、それが好ましいかどうかを(「どちらとも言えない」という回答も含めて)調査するという工夫をした。取り扱いの難しい調査であることは確かだが、個人のインフレ選好に関して具体的な水準にまで一歩踏み込んだ調査といえる。
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