「紙幣や国債は返済する必要がない」は本当か 「返済される」からこそ守られる大切なこと
「財布に入っている1万円札が日本銀行の借用証書であり、お札の持ち主が日銀に1万円を貸している」と考えている人はほとんどいないのかもしれない。しかし「実はそうなのである」ということをここであらためて考えたい。
最初から注意を促しておきたいのであるが、1万円札は「日銀がいつまでも返済する必要のない借金」などではなくて、「日銀がいつでも返済することを期待されている借金」なのである。紙幣が「返済される」からこそ日々無数の経済取引が紙幣を介して滞りなく取り結ばれている。当たり前であるが、この大切なことを一部の人は忘れているようである。
江戸時代のコメ取引でたとえると?
まずは日銀のような中央銀行がまだ存在せず紙幣が発行されていなかった時代のことを考えてみよう。たとえば商人が農家から大量のコメを買うとする。コメ商人はコメ農家に対して支払期日と支払金額を定めた手形を振り出す。通常、手形の額面金額はコメの支払代金を上回るが、この差額部分が期日までの利息に相当する。
いずれにしても「手形が期日に返済される」という前提があるからこそ、コメ農家は支払代金としてコメ商人が振り出した手形を受け取るのである。
「手形が期日に返済される」という前提が満たされていると、その手形はコメ商人とコメ農家の関係を超えて市中に出回る可能性が出てくる。たとえばコメを売った農家が他の農家から麦を買う場合、その手形で代金を支払えばよい。その際、手形の持ち主がコメ農家から麦農家に交代することが手形に裏書きされる。
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