患者と医師がすれ違ってしまう本質的な理由 恋愛と同じで「正論が勝つわけではない」
「検査しなくて大丈夫なのかな」「よくわからないまま薬を出された」など、病院で診察された内容を十分に理解できず、不満や不安を感じたことがある方は少なくないでしょう。日本医師会による調査でも、受けた医療に満足していない理由の第2位に「医師の説明」が挙げられます(ちなみに1位は「待ち時間」)。
日本の外来は「3分診療」とも揶揄(やゆ)されるように、一人ひとりにかけられる時間が少ないことがあります。その限られた時間で医師は、どうしたら患者さんに適切な医療を提供できるかを考えて診療しています。とはいえ、十分なコミュニケーションが取れず、医師と患者さんのちょっとしたすれ違いから不安な気持ちが発生してしまっているのも現状です。
医師と患者のすれ違い
先日、こんな悩みをある医師から聞きました。80代の肺炎の患者さんに対し、肺炎の治療後、体力回復のためにリハビリ専門病院への転院を提案したときのことです。患者さんの娘さんが「母を見捨てるということですか」と猛抗議し、かたくなに転院を拒否したそうです。
その医師の提案は医師の視点では至極当然のものです。彼のいる病院は「急性期」(病気になり始めの症状が急変する時期)の対応に強みを持ちますが、患者さんは総合病院での治療が必要ないほどまで回復していました。そこからはリハビリ専門病院のほうが手厚いリハビリを受けられるため、回復には効果的と判断したのでしょう。
しかし患者さん側は、そもそも病院ごとに機能が分かれていることを知らず、大学病院や急性期病院がすべての点においてほかよりよい治療を提供していると考えていたようです。その誤った認識、リハビリ専門病院に移るという提案に対して「肺炎のケアがされないのでは」「重症でない患者を追い出そうとしているのでは」と感情的になってしまったのかもしれません。
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