「円の先高観」がまったく消えない本当の理由 「不純な利上げ」では「ドル買い」にはなりにくい

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「円高は米国の通貨政策のせい」と思われているが、それだけではない。なぜ「円の先高観」は消えないのか(写真:AP/アフロ)

円安はやはり春先までしか持たなかった

注目された日米経済対話の初会合は事前に不安視されていたドル高や日銀の金融緩和への目立った牽制もなく幕を閉じた。不穏な事態を念頭に円買い・ドル売りを進めていた向きは、とりあえず巻き戻しを図っているものと思われる。麻生太郎財務大臣が口にした「摩擦から協力」は非常にキャッチーなフレーズであり、市場参加者を安堵させる効果を持ったのではないか。

だが、円の先高観が完全に払拭されたとは考えにくい。筆者は昨年12月に「2017年春以降のドル相場『反落』に備えよう」と題した寄稿を行った。骨子は以下の2つだ。

①大統領のハネムーン期間が終わり、政権の地力が見え始めるであろう4~6月期以降、ドル高への牽制が意識されやすくなって、再びドル円相場は反転下落するだろう

②歴史的に見ても、購買力平価(PPP、現在100円程度)から実勢相場がプラス20%以上乖離することは持続的ではなく、2017年末には再びPPPに照らして違和感のない1ドル=100~105円のレンジに回帰する展開を予想

この寄稿後、ドル円相場は117~118円の高値推移が続いたものの、結局ドナルド・トランプ大統領の政権執行能力に疑義が付く出来事が相次ぎ、拡張財政への期待が剝落する中、米金利もドル相場も反落、4月には5カ月ぶりに110円を割り込んだ。ハネムーン期間を終えて内政を切り盛りできないという「地力」が露呈し、大統領の意思ですぐに動ける通貨・通商政策や軍事を含む外交政策に失地回復を懸ける展開を見るにつけ、「やはり」という思いを禁じえない。

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