ASUSスマホ、「コスパ最強」と言える深い理由 PCメーカーとして、日本市場を徹底分析した

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だがエイスースは、世界的に見て大きなシェアを持つスマホメーカーというわけではない。にもかかわらず、これだけ質と性能が高いモデルを、低価格で提供できる理由はどこにあるのだろうか。

今年の夏に発売される予定の「ZenFone AR」は、3つのカメラで空間を認識し、昨年『ポケモン GO』で注目されたARをより本格的に実現する、グーグルの「Tango」という技術を搭載している(著者撮影)

それは、同社がパソコンメーカーであり、そのリソースをうまく活用しているからだ。

そもそもエイスースは、マザーボードを中心としたパソコン用パーツを手掛け、後にパソコンなどの開発も行うようになった企業だ。

日本でも2008年ごろに人気となった「ネットブック」と呼ばれる5万円前後のミニノートパソコンで人気を獲得して以降、日本法人を設立して本格的な市場開拓を進めてきた。

その後エイスースは、タブレットとしても使える2 in 1パソコンからゲーミングパソコンまで、幅広い種類のパソコンを提供。コストパフォーマンスの高さや製品のユニークさで、ITに詳しいユーザーの間で人気となった。パソコンの延長線上でタブレット端末の開発にも積極的に取り組んでおり、2012~2013年にグーグルが販売した人気タブレット「Nexus 7」も、実はエイスース製だったのだ。

インテルとの強力なパートナーシップ

タブレットとスマホは使用するOS(基本ソフト)が共通していることから、CPUやメモリなど、使用する部材も同じものが多い。それゆえ、エイスースはスマホ単体では大手メーカーにかなわないものの、タブレットなどで使用する分と合わせて部材を大量調達することで低コスト化を実現。それがスマホの低価格化へとつながっているのだ。

ZenFone 2の背面にインテルのロゴがあることからもわかるように、エイスースはかつて、スマホにもインテル製のCPUを積極的に採用していた(著者撮影)

それを象徴しているのが、ZenFone 2シリーズの頃までインテル製のCPU「Atom(アトム)」シリーズを採用していたことだ。Atomは低価格のパソコンなどにも用いられているCPUで、エイスースとしては幅広い製品に搭載しやすいメリットがある。

しかもインテルは当時、スマホ向けCPUで最大手のクアルコムに対抗するべくAtomシリーズの強化を進めていた。エイスースはパソコンで培ったインテルとの強力なパートナーシップを生かし、スマホにもインテル製CPUを多く採用することで、調達の効率化を進めたのである。

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