郊外住宅地には「夜の暮らしの充実」が必要だ

「月1回・夜9時まで」開かれるスナックの正体

閑静な住宅地の古い民家を改装して作ったスペースでは、不定期でバーやスナックが“開店”する(撮影:梅谷秀司)
しんと静まりかえった土曜日の夜の住宅街(神奈川県・横浜市)。18時前になると、1軒の民家風建物の前に小さな立て看板が出された。「スナックとみと」。民家をリノベーションした部屋の中では、プロではないが料理好きの人がこしらえた家庭料理がカウンターにずらりと並び、お酒も用意されている。
夜が更けるにつれ、近隣住民たちに加えて町内会の会長、SNSでの案内を見て遠くからやってきた人などが次々と訪れ、20時ごろには超満員に。ある住民は言う。「普段は飲みにいくといったら野毛の横丁だけど、家の近くで飲むのもいいね。こんな人が近くに住んでいたのかと、ここに来て初めて知った」。
この小さなスナックの存在は、若い世代の人口流出にみまわれる郊外住宅地の生存戦略を考えるうえで、1つのヒントを提供してくれるかもしれない。

 

吉祥寺駅JR北口前にある通称ハモニカ横丁(東京都・武蔵野市)。夜になれば、赤提灯のもとに老若男女がひしめき合う。私は、建築史家の倉方俊輔編『吉祥寺ハモニカ横丁のつくり方』の倉方氏によるインタビューの中で、吉祥寺のハモニカ横丁的なものが今後、吉祥寺ではないどこか別の街に展開していく可能性を問われた。その際、「いわゆる繁華街や駅前商店街ではない、郊外住宅地の中にハモニカ横丁的なものが必要なのではないか」と答えている。

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今後、郊外住宅地が高齢化していくこと、定年後に郊外で起業したり、NPO活動を始めるような人たちが増えるかもしれないこと、現役世代でも、在宅勤務をする人が増えるであろうことなどを考えるならば、もっと楽しく充実した郊外生活が重要になるはずである。

郊外住宅地は「昼間の街」だ

そもそも、郊外住宅地は昼間の世界を重視してつくられた。子どもを育てること、そのために母親が安心できることが重視されたので、学校、緑地、公園、歩道の整備、あるいは歩道と車道の分離などが中心となり、商業については、昼間や夕方の食事の準備のためのスーパーなどの小売業と、子ども連れで行きやすいファミリーレストランなどが中心となった。

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