郊外住宅地には「夜の暮らしの充実」が必要だ 「月1回・夜9時まで」開かれるスナックの正体

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郊外住宅地の中に求められるのは、駅前商業地にあるような商業主義ではない。それは本物の飲食店でやればいい。かといって、行政やいわゆる市民団体が行う市民主義でもない。それは公民館でやればいい。

住宅地の飲食店は、「趣味開き」がちょうどいい

商業主義と市民主義の中間。あえていえばコミュニティビジネス的なものだが、それも言葉としてはしっくりこない。趣味の延長でもあるが、自分の部屋にこもって趣味に耽溺(たんでき)するのではなく、それを人に公開して楽しみ、少しは稼ごう、という意味では一種の住み開き。「趣味開き」とでも言っておこうか。

筆者も趣味のLPレコードでロックとジャズの歴史を解説するイベントを行った(撮影:編集部)

実際、スナックとみとで料理を作る人は、いつかは自分の店を開いてみるのもいいかな、といったくらいの気持ちの普通の人が担当しているという。鳩山ニュータウン(埼玉県・比企郡)にも2017年7月以降に、ユニークなスナックができるという話もある。それも素人によるものだ。楽しみである。

最近は若い世代にスナックブームが起きつつあり、若い人が店主をつとめる「ニュースナック」も増えているという(玉袋筋太郎『スナックの歩き方 』イースト新書Q 2017年)。

「CASACO」は第1回デザインアワード2017(日本建築家協会関東甲信越支部神奈川地域会)の優秀賞に選ばれた(撮影:梅谷秀司)

店主がプロではなく、副業や趣味であることも多い。ニュースナックが、都心の繁華街だけでなく、郊外のニュータウンにも増えたほうがいい。

2016年に私は多摩ニュータウンを設計した方の話を聴く機会があったが、彼は多摩センター駅前の大通りに屋台をたくさん出したいと言っておられた。あの人工的なニュータウンを設計した方が、そのように言われたことに私は感銘を受けた。ぜひとも土曜日の夜あたりに多摩センター駅前に無数の屋台が出るようにしてほしいものだ。

三浦 展 社会デザイン研究者

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みうら あつし / Atsushi Miura

カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『第四の消費』『日本人はこれから何を買うのか?』『東京は郊外から消えていく!』『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。

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