「マルチスキル」で勝負するには作法がある 「需要」があるかの見極めが大切

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その点、現在、Hさんが考えているやり方自体は、理論上は間違っているとは思いません。今までの経験を生かして、マルチスキルで活躍することを念頭に置かれているわけですから。あとはそのマルチスキルを活用できる仕事とキャリアがどのような分野で発展できるのか、の見極めが大切になってきます。

つまりそこに需要があり、本当に差別化による価値の構築が可能な分野であるか否かを見極める、ということですね。

その点については、過去にHさんは行動を開始した後に、「何か需要がなさそうだ」「それでキャリアを切り開くことはできなそうだ」と考え、方針転換を途中でされていることが多いですから、今回は行動する前にぜひ、需要の調査と勝負するための施策につき入念に検討してみてください。そこが勝負できる労働市場であれば、もちろん頑張るべきでしょう。

さて、そのうえで3点目ですが、マルチスキルで勝負しようと思ったら、すべてが中途半端ではいけません。マルチの分野のすべてにおいて平均以上のスキルと経験を有していることが重要です。中途半端な何でも屋さんではなく、複数分野におけるプロであり唯一無二の価値を、労働市場に問いていこうとするわけですから。

雑務をこなせない人に難しい仕事はこなせない

そのように考えますと、Hさんの現在の仕事に対するスタンス、たとえば「スキルアップにつながらない」といった考えや「無駄に時間を食う」といった考えは、マルチスキルを構築しようとする人の志とは反対の考えです。

どんな仕事においても圧倒的な実績を出せるようでないと、キャリアの先発組には勝てませんし、ましてや異なる分野において転職採用される可能性も高くはないでしょう。

Hさんは現在すでに29歳で、一般的にはポテンシャル採用されるような年齢ではありませんから、構築しようとしているマルチスキルによる「Hさんならではの」価値を採用側に認めさせようと思ったら、現在の仕事(マルチスキルの一部)において、圧倒的な経験と実績を有していることを証明しないといけません。

雑務をこなせない人には難しい仕事はこなせません。簡単な仕事を完璧にこなせない人にはそれ以上のレベルの仕事は巡ってきません。現在の仕事をおろそかにせず、どのようにしたら武器となるのかを考え抜き、将来、発展のための基盤としましょう。Hさんが今後理想とされるキャリアにおいてご活躍されることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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