それでもドル高にかける「ミセスワタナベ」 「1ドル110円割れ定着」なら方向転換も?

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 3月23日、日本の個人投資家「ミセスワタナベ」が、持ち前の逆張り戦略でトランプラリーの調整相場に立ち向かっている。2010年9月撮影(2017年 ロイター/Yuriko Nakao/File Photo/Illustration)

[東京 23日 ロイター] - 日本の個人投資家「ミセスワタナベ」が、持ち前の逆張り戦略でトランプラリーの調整相場に立ち向かっている。レンジ相場が続いていたため買い余力は十分。ドル/円<JPY=EBS>が110円に下落する際も積極的に買いを入れ、相場下支えの一因となった。

ただ、リスクオフ局面が長引き、110円割れが定着するようであれば、順張りのドル売りに方向転換するかもしれないと警戒されている。

根強いドル高予想

あるFX(外為証拠金取引)会社では、ドル/円が111円半ばに下落した21日、ドル買い建てが、売り建ての約3倍と、前の日の約2倍から急拡大した。売り買いの比率や規模は、昨年の英国民投票前に市場で楽観的なムードが広がっていた局面に近いという。

前日の110円への下落から111円台半ばに持ち直した23日東京時間には、早速111.00円に個人のドル買い注文が集まった。「いったん底を確認したと見る向きが、増えているのではないか」(国内金融機関)と見られている。

ほかの複数のFX会社も、個人投資家のドル/円の買い持ち高が、売り持ち高を上回る傾向が目立ってきているという。

長期保有の投資家が多いことで知られる東京金融取引所のFX「くりっく365」の建て玉。米大統領選後のトランプ相場では逆張りのドル売り越しが続き、昨年12月に一時15万枚の売り越しとなっていたが、今年2月あたりから徐々に偏りが解消し、21日には買い越しに転じた。

トランプ米大統領が掲げる政策に対し、実現時期などへの不安が強まっているのが、相場調整の背景だが、米経済指標は依然として堅調。「米国の利上げが打ち止めという見方が強まりでもしなければ、一方的なドル安ではなく、中長期的でのドル高を予想する個人が多い」と、外為どっとコム総研の調査部長、神田卓也氏は指摘する。

外為どっとコム総研が14―21日に実施した個人投資家対象のアンケート調査では、今後1カ月のドル高継続の予想は5割を超えている。

資金的にも「ミセスワタナベ」のドル買い余力は大きいようだ。

金融先物取引業協会のまとめるドル/円の月次の取引金額を見ると、米大統領選後の昨年11月から今年1月は370─480兆円規模で推移したが、2月には318兆円に落ち込んだ。

その背景には、米利上げの行方やトランプ政策の先行きに対する不透明感が強まり、111─115円のコアレンジを緩やかに1─2回往復するだけの方向感のない値動きにとどまったことがあるとみられている。「取引がレンジの上限での売りと下限での買いに集まったことで、取引金額が膨らまなかった」(別のFX会社)という。

さらに今月に入って、14─15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて、ドルはレンジ上限付近の115円台に上昇。このタイミングでドルロングを手放した個人が多いとみられている。ポジションが軽くなっているなかで、得意の逆張りに動き始めたようだ。

足元の111円台はレンジの下限付近にあたる。「レンジプレーの観点からは、ドルの仕込みどころといえる」(別のFX会社)というわけだ。

早めの方向転換も

もっとも、状況次第では、個人も早々にドル売りに変わる可能性もある。

ドル/円は、トランプ相場の半値押しに当たる110円付近に接近しつつある。「半値押しまでは調整の範囲と捉えたとしても、それを割り込んで定着するようなら、さすがに買い意欲がそがれかねない」(先のFX会社)という。

目先で警戒されるのは、米株価の動向だ。米大統領選後は米利上げの思惑を織り込む中でも、トランプ期待を背景に高値を更新し、金融市場を心理面で支えていたが、足元では5日続落。21日はトランプ期待が後退する中で大幅安となった。

「米株価の下げを受けて、ドル/円が下方向にあるストップロスのトリガーを引いて下げを速めてしまえば、今度は日経平均株価が引きずられて下落するという負の連鎖に陥りかねない」(さらに別のFX会社)と警戒されている。

一方、仮に地合いが改善して値を持ち直した場合でも、今度は個人投資家が売り方に回ってドル/円の上値を押さえる可能性もある。

リスク要因がくすぶる中では、個人は利益確定ポイントを近い距離に設定する傾向がある。「111円付近で仕込んだドルロングは、113円あたりから利益確定で売られ始めるのではないか」(神田氏)と、このところのレンジ上限への到達を待たずに売りが膨らむ可能性も指摘されている。

(平田紀之 編集:伊賀大記)

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