社長が「捨てられない」と社員は力を出せない その会議や資料、残業は本当に必要ですか

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トップには「捨てる力」が必要だ(写真:Elnur / PIXTA)
ジョンソン・エンド・ジョンソンやフィリップスなど世界的な企業6社で社長職や副社長職を歴任した新将命さんの連載「トップの力」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けします。

一利を興すためには一害を除け

アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です

経営とは、選択と集中が原則である。なぜなら、いかなる大企業といえども「我が社の経営資源は無尽蔵にあります」ということはないからだ。「ヒト・モノ・カネ・時間・情報」などの経営資源には限りがある。限られた経営資源を最適配分するのが、トップの腕のみせどころであることはいうまでもない。そして、経営資源の最適配分を行ううえで、肝心なのが「捨てる力」である。どこにどれだけ経営資源を配分するかの前に、何をやらないかを決めること、即ち、「捨象」や「廃棄」が大事なのだ。

「一利を興すは一害を除くに如かず。一事をふやすは一事をへらすに如かず」(耶律楚材・モンゴル帝国チンギス・カンの側近)という。優先順位ではなく、劣後順位を決めてきちんと実行。選択と集中の肝は捨象である。

ピーター・ドラッカーも、優先順位を決めるためにやらなくてはならないことは「なすべきでないことの決定」であると指摘している。

しかし、同時にそれが難しい決定であることも付け加えている。優先順位を決める場合、優先順位の下位にあるものは、先送り、後回しにすることになるが、劣後順位を決定するということは、劣後順位の上位にあるもの(最も重要度の低いもの)は、それを思い切って捨てるということを意味する。「メリハリ」のない経営はダメ経営なのだ。

一度捨てられたものは、ほとんど復活の見込みはない。いざ捨てるとなると、本当にそれでよいか不安や迷いが生じるものだ。したがって、劣後順位を決めるのには「捨てる勇気」が必要となる。捨てる勇気がない、すなわち劣後順位を決めずにいるということは、あまり企業の業績に対する貢献度の高くないことに貴重な経営資源を無駄使いするか、その案件を先送りすることとなる。先送りのたなざらしであっても、存在する以上は管理コストが生じる。それでは、限られた経営資源をいたずらに費消することとなり、選択と集中は単なるお題目に終わってしまう。

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