東京人の知らない名古屋「着席通勤」の実態 快適性と速達性、求められるのはどっち?

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一方、「都心側途中駅からの着席需要」については「ホームライナー瑞浪」「ホームライナー中津川」が金山駅、千種駅、鶴舞駅、大曽根駅と中央本線名古屋市内の各駅に停車して旅客をこまめに拾い、乗車率を確保している。名古屋エリアで都心側の複数主要駅に停車する列車としては、神宮前駅・金山駅・名鉄名古屋駅に停車する名古屋鉄道(名鉄)名古屋本線の快速特急・特急の例がある。

停車駅を増やすことで乗車率の改善が見込める列車としては、東海道本線の「ホームライナー大垣」を挙げたい。同列車の運行区間を名古屋より手前の大府駅から大垣駅間とした上で、金山駅を停車駅に追加するのはどうだろうか。同駅はJR東海道本線・中央本線、名鉄名古屋線、名古屋市営地下鉄名城線・名港線が接続するターミナル駅で、JRの1日乗車人員は6万6000人(2015年度・JR東海)に上る。金山駅停車により、一定の乗車を見込むことができるだろう。

快速「みえ」指定席についても、工夫次第で通勤利用を増やせる可能性がある。名古屋市内へ関西本線で通勤している会社員の井村昌広さん(50)は「『みえ』指定席の通勤利用を普段はあまり見掛けない」と証言した上で、「有料座席として選ばれるためには、リクライニングシートは最低限の条件だ。特急用車両のキハ85系を改造した上で、キハ75形と連結し、全列車4両編成としてほしい」と要望する。

快速「みえ」は全列車4両化を

沿線住民などから根強い要望のある「みえ」の4両化について、河原田駅-津駅間で同列車の運行ルートとなっている第三セクターの伊勢鉄道は「4両列車が増えると、当社の車両使用料負担が増加してしまうことは事実だ」と明かした上で、「『みえ』の連結両数決定は、JR東海の判断で決定されるため、当社が決定に関与することはない。ただ、現状は混雑時以外、2両編成で十分に対応できている」と説明する。

しかし、ゆったりとした車内環境の提供は、並行する近鉄との競争上重要であるはずだ。そこで、将来キハ75形の更新時期が到来する際に、伊勢鉄道の筆頭株主である三重県など関係自治体の支援を前提として、「みえ」車両の半分を伊勢鉄道の保有車両として購入し、実際の車両管理はJR東海に委託する方法を提案したい。

車両管理委託料の負担が新たに発生するが、伊勢鉄道にとってはJR東海に支払う車両使用料負担の軽減につながる。三重県にとっても、伊勢鉄道の持続的運営に向けた支援策として検討に値しよう。

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