東京人の知らない名古屋「着席通勤」の実態 快適性と速達性、求められるのはどっち?

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関西本線では、特急「ワイドビュー南紀」と快速「みえ」の指定席が快適通勤に対応している。まず乗車したのは、名古屋19時47分発の特急「ワイドビュー南紀7号」新宮行き(列車番号:3007D)。この列車は関西本線において、一般的な退勤時間帯に利用できる唯一の特急である。

車両は特急用のキハ85系ディーゼルカー4両編成で、筆者は1号車普通車自由席に乗車した。当初の1号車の乗車率は約5割で、最初の停車駅である桑名駅で1号車の旅客の多くが下車した。

名古屋駅-岐阜駅・大垣駅・多治見駅・四日市駅間などには「定期券用自由席回数特急券」(以下、JR特急回数券)が設定されており、1回当たり310円で特急自由席を利用することができる。関西本線と並行する近畿日本鉄道(近鉄)名古屋線では特急の通勤利用が盛んだが、近鉄名古屋駅-桑名駅・近鉄四日市駅間の特急料金は510円で、JR特急回数券のほうが安い。

別のある日、今度は名古屋20時33分発の快速「みえ25号」伊勢市行き(列車番号:2925D)1号車普通車指定席に乗車した。同列車は通常2両編成で、1号車の半分が指定席となるが、ピーク時などには4両編成で運行され、1号車全席が指定席となる。この日はキハ75形ディーゼルカー2両編成を2本つないだ4両編成であった。

1号車の指定席利用者数ベースでみた乗車率は特急より低い3割強で、他に立席が10人強あったが、こちらは最初の停車駅である桑名駅での乗降はなく、次の四日市駅でも3人が下車しただけだった。

駅での購入では「みえ」の指定席料金は520円(通常期・繁忙期)で、名古屋駅-四日市駅間では近鉄特急料金510円とほぼ同額であるが、津駅以南まで乗り通す場合は近鉄特急料金よりも割安になる。このため「みえ」の指定席は四日市駅より先まで乗り通す旅客が多いのだろう。

速さと都心部での利便性が重要

今回の一連の視察で浮き彫りになったことは、名古屋エリアでは「速達性」または「都心側途中駅からの着席需要」に応えている列車が高い乗車率を確保していることである。

「速達性」については、東海道新幹線が圧倒的優位にある。また、中央本線「ホームライナー瑞浪」「ホームライナー中津川」の所要時間は名古屋駅-多治見駅間で快速よりも6分速い。

一方、東海道本線の「ホームライナー大垣」や特急列車と、快速・新快速・特別快速の所要時間の差はほぼゼロである。また、関西本線特急「ワイドビュー南紀」と快速「みえ」の名古屋駅-四日市駅間の所要時間差もごくわずかである。名古屋エリアの通勤向け有料列車が一定の乗車率を確保するためには、「速達性」は重要な要素であると考えられる。

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