株主総会議事録から見える、東電のホンネ 希薄な加害者意識、除染は「お客様対応」と無責任発言も

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「親身、親切な賠償」という言葉もひとごとのようだ。本来であれば、たとえば「誠意のある賠償」「真摯な姿勢での賠償」などが、ふさわしい表現だろう。これまで東電が十分な賠償をした事実がないことは紛れもない事実だ。

それを証拠に、おびただしい数の裁判や裁判外紛争調停制度を用いた損害賠償請求が起きている。汚染水処理の問題で「大変な苦労をしながら」というのも、現場を意識した発言なのかもしれないが、事故を起こした当事者としての責任感が稀薄で、ひとごとのように聞こえる。

あいまいな決算書、答えになっていない回答も

「除染費用などの損害項目につきましては、(中略)一定の見通しが可能となった時点で(決算書に)計上いたします」(山口博副社長)(→同(3)の5ページ)。

(東洋経済記者による解説)東電はこれまでルールが決まっていないために、合理的な見積もりができない費用については、決算書上での計上を見合わせている。除染費用はその最たるものだ。

別の株主からは国の予算に9000億円もの巨額の予算が措置されているにもかかわらず、「当社(東京電力)は、1円も計上していない。…(きちんと除染費用を計上した場合には、東京電力は)もう(経営を)やっていけないんですよ。どうするんです」と問い詰められている。この株主は東電の会計監査人である新日本有限責任監査法人の解任を提案したが、反対多数で否決された。

「GE(ゼネラルエレクトリック)等との賠償協議につきましては、これまでの事故原因等に関する調査分析におきまして、当社が賠償請求をできるような事実は確認されていないため行っておりません」(山口副社長)(→同(3)の5ページ

(東洋経済記者による解説)これは国際環境NGO・グリーンピースジャパンによる質問だ。GEから導入したMARKⅠ型原子炉の安全性については、福島第一原発稼働後の1980年代から、当事者である設計者を含む専門家によって、格納容器の強度など多くの問題が指摘されてきた。

東電は「各種の指摘に対してはアクシデントマネジメント対策の一環といたしまして、代替注水、格納容器からの除熱、電源融通等の対策を講じるなど、安全上必要な対策を行ってきてございます」「国から認可を受けるとともに、運転開始前に国の検査において問題がないことが確認されてございます」(山口副社長)(→同(3)の5ページと述べているが、きちんとした説明になっているようには思えない。

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