佐藤優「アメリカは世界のセコムになる」 田原総一朗と考えるトランプ政権の本質
不動産取引的手法で、相手をビビらせるトランプ
田原 総一朗(以下、田原):安倍首相は2016年11月17日、ニューヨークでトランプ次期大統領といち早く会いました。これは佐藤さん、どう見ましたか?
佐藤 優(以下、佐藤):外務省は「駐米大使がやった」と言い、首相官邸は「安倍さんの人脈を使った」と言って、手柄争いをしていました。まあ同じルートでやったと思いますが。
安倍さんと会ったときのやり取りを見ると、トランプはガンガン地上げする不動産屋との駆け引きみたいな感じです。要するにトランプは、ディール(取引)が大好きなんです。
田原:不動産屋のディールを外交に持ち込んでいるんだ。
佐藤:そうです。最初にガツンとぶつけて、それで相手がビビって譲歩すればよし。ビビらなければ、相手の顔色を見ながら、不動産屋みたいに値段を上げ下げする。
でも、ビジネスでは、最初に極端なことを言いすぎて失敗することもあります。たとえば超高級マンションを買いたたいてやろうと思って「1000万円でどうだ」と言えば、「ふざけるな!」と交渉は不成立。「1億8000万円でどうだ」とか、いいところを言わなければダメでしょう。初っ端から中国とぎくしゃくしているところを見ると、おいおい大丈夫かという感じがします。
個別の業界でいうと、日本が懸念されるのは自動車ですね。トランプは就任早々、日本の通商政策は不公平だと名指しで批判した。「われわれが日本で車を売るとき日本は販売を難しくさせているが、日本はアメリカで車を売っている」と。トランプの次の一手が気掛かりです。