自転車界のインテル、「シマノ」高収益の秘密 ツール・ド・フランス出場チームも部品を愛用
大阪府堺市。ここに本社を構える企業といえば、電機大手のシャープだろう。だがこの地には、知る人ぞ知る世界的な超高収益企業がある。自転車部品を手掛ける東証一部上場企業、シマノだ。
営業利益率が20%前後で、株式時価総額は三菱重工業や富士通、イオンなどよりも高い1兆6200億円(3月10日終値ベース)。有利子負債額を現預金額が上回る実質無借金で、自己資本比率は88%と財務体質も「超」優良である。
リールや竿など釣り具用品も扱うが、収益柱は自転車部品。ホイール、ギア、変速機、ブレーキ、レバーといった部品を国内外で生産する。フランスで開催される世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」でもシマノの製品は圧倒的な支持を集める。2016年の大会では参加22チーム中17チームが同社の部品を採用した。
スポーツ用自転車部品では8割超のシェア
SMBC日興證券の試算によれば、スポーツ自転車向け部品でシマノは85%程度の世界シェアを握る。変速機付き自転車でも約7割で、競合メーカーの伊カンパニョーロ、米スラムを大きく引き離している。
シェアが高いのはレースの世界だけではない。自転車産業に詳しい慶應義塾大学の駒形哲哉教授は、「(自転車文化が根付いている)欧州では高価格の自転車が売れるため、シマノのプレゼンスが高い。普及価格帯でも日米欧で売られる自転車のほぼすべてにシマノ製品が使われている」と分析する。俗にママチャリと呼ばれる「軽快車」の分野でも、変速機付きの車種であればほぼシマノ製品が使われていると言っていい。自転車の中枢部品を一手に担うことから、「自転車界のインテル」の異名を持つ。
部品メーカーであるがゆえ、これまで目立たない存在だったシマノだが、最近は自ら自転車の需要喚起に動き出した。大阪・梅田の商業施設、グランフロント大阪に2月、製品展示型カフェ「シマノスクエア」を出店した。広さ約309平方メートルの店舗の半分はカフェで、残りの半分は自転車部品や釣り具といった歴代のシマノ製品が展示されている。
出店の狙いについて島野容三社長は「シマノの製品を展示することで世界観を理解してもらい、自転車や釣具の文化向上に貢献したい。愛好家同士がカフェで語り合うこともできる」と話す。「土日はカフェも客を捌ききれないほど」(シマノスクエアの池本英樹店長)の繁盛ぶりだという。
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