あの新幹線メーカーが米国市場で陥った窮地 期待の準高速2階建て試作車が「試験不合格」
「中国や日本には高速鉄道が至る所にあるが、わが国にはない」
トランプ米大統領の発言をきっかけに、日本の新幹線関連銘柄が2月10日に軒並み値上がりした。大手鉄道車両メーカー・日本車輌製造(日本車両)はその代表格。1日の取引量は通常10万~20万株程度にすぎなかったが、この日は一気に500万株を超える大商いとなった。株価も14%上昇した。3月1日にはトランプ大統領が2月28日の施政方針演説で1兆ドルのインフラ投資を表明したことを材料に株価が一時8%上昇した。
日本車両はJR東海の子会社であり、東海道新幹線の車両を多数製造している。米国イリノイ州に車両工場があり、もし、日本の新幹線が米国を走るようになれば、車両製造の仕事が大きく増えるに違いない。株式市場はそう踏んだのだ。
案件の方向性について協議中
しかし日本車両は、目下米国で窮地に陥っている。1月27日に発表された2016年度第3四半期決算。短信の「継続企業の前提に関する重要事象等」という項目に、それまで見られなかったコメントが載った。
「米国向け大型鉄道車両案件については、(中略)設計の見直しに対応する中で技術的な課題に直面し、当該案件を予定通り遂行することが困難になった旨を客先に申し入れ、今後の案件遂行の方向性について現在協議を行なっております」
「設計見直し」「案件遂行が困難」といった言葉の羅列から、何かよからぬ事態が発生していることがうかがえる。いったい何が起きているのか。
日本車両の2014年度決算は、米国の大型案件において現地作業員の技術習得の遅れから原価高となり最終赤字に転落した。2015年度はプロトタイプ車両が強度テストをクリアできず、追加設計費用や製造工程の見直し費用などが発生した(詳細は「あの新幹線メーカーが大赤字に陥った事情」)。それから1年以上経った現在、事態は改善に向かうどころか、さらに悪化している。
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