任天堂が「マリカー」を訴えざるを得ない事情 「マリオ」のただ乗りは絶対に許せない

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著作権法でも、不正競争防止法でも、被害を受けた側の請求内容としては「違法行為の差し止め請求」と「損害賠償請求」を認めています。任天堂が今回の訴訟で「マリカー」に請求したのは、違法行為の差し止めと損害賠償1000万円です。

このうち、差し止め請求は認められる可能性が高いことが予想されます。任天堂が作り出し、これまで価値を高めてきたキャラクターを無断利用する商売はできないからです。ただ、差し止めの請求が認められても、相手の会社が本当に営業をやめる保証はありません。

一方、損害賠償はどうでしょうか。複数の報道から、任天堂は今回の請求額である1000万円は被った損害の一部であり、今後の裁判の中で請求額を増やしていく可能性があることをほのめかしています。

多額の損害賠償が認められる可能性は低いが…

ただ、過去の判例を見ても、このようなケースで多額の損害賠償を認めたケースはまれです。不正競争行為によってどのような損害を受けたのかを証明することがとても難しいからです。また、裁判で勝訴しても、勝訴した満額を支払ってもらえるとも限りません。

とはいえ、裁判を受ける側の「マリカー」も費用だけでなく、裁判の準備などで多大な負担を強いられることになります。裁判に勝つか負けるかにかかわらず、裁判を続けていくことに多額のコストがかかるとすれば、最後は会社の体力勝負となります。数千億円の手元資金を有している任天堂にとっては大した負担ではない一方、ベンチャー企業の「マリカー」は、訴訟対応だけで相当に苦慮することが考えられます。

実際に、「マリカー」は任天堂の訴訟提起を受けて2月24日に自社HPで「世界的企業との法的紛争となると、どの程度の負担がかかるのか想像することもできません。このままでは事業の継続に多大な影響が出ることを恐れております」というコメントを出し、企業存続の危機であることを認めています。

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