独走サントリー ビール3位浮上 夏商戦の裏舞台

独走サントリー ビール3位浮上 夏商戦の裏舞台

万年最下位に甘んじていたサントリーに、歴史的瞬間が訪れようとしている。10日に発表される今上期のビール系飲料の課税出荷数量で、サッポロビールを抜いてシェア3位に浮上するのが、ほぼ確実となっているのだ。

2007年度は、サッポロのシェア13・1%に対し、サントリーは11・4%と後塵を拝していた。しかし今年1~3月で両社の差は0・5ポイント差まで縮まった。サッポロは「逆転される可能性は否定できない」と厳しい表情を浮かべる。

それだけではない。ビール市場に参入して今年で45年目。赤字続きだったサントリーのビール事業が、悲願の黒字となる可能性も高まっている。これまでも“オオカミ少年”と揶揄されてきた黒字化宣言だが、今期はこれまでと風向きが違う。07年度は8割だったビール工場の稼働率が、今年1~6月で9割まで改善。増産しているにもかかわらず、「サントリーの『金麦』や『ジョッキ〔生〕』が品切れしそうな勢いで売れている」(大手酒類卸)。サントリーのビール事業部長の相場康則常務取締役も「無駄な販促費を削り、会社計画より1年前倒しで赤字脱却を目指す」と鼻息は荒い。

販促費を削減して販売数量が増えるなど、まるで“怪奇現象”だが、そのカラクリは実に単純。2月にキリンビール、3月にアサヒビール、4月にサッポロが、原材料高を理由にビール類の3~5%値上げに踏み切った。しかしサントリーだけは、4月に業務用ビールを値上げしただけで、家庭用は9月まで据え置く。ビール業界全体の出荷数量が1~3月で前期比97・4%まで落ち込む中、店頭での“お得感”が際立ったサントリーだけは109%と絶好調。9月の値上げまで、独り勝ち現象が続くことは間違いなさそうだ。

数量増が追い風となり、麦芽など30億円の原材料高と広告宣伝費の増加をこなしている。販促費の削減も効いて「上期だけで数十億円も赤字が縮小している」(相場常務)と胸を張る。

安売りに大ブーイング

勢いに乗るサントリーだが、販売手法に対し非難の声も上がっている。

「発泡酒『ゼロ生』1ケースのおまけに、チューハイ『アワーズ』の試飲缶を1ケースも付けている。景品表示法違反ではないのか」

「POSデータの売れ筋から落ちないように、一部の店舗でサントリーの営業マンが商品を買い取っている」

ビール業界の足並みを乱す“悪事”だと、競合他社は怒りをあらわにする。サントリーは「事実無根。そんなバカな売り方を本社は指示していない。シェア争いには興味がない」(相場常務)と切り捨てる。だが今年に入り、こうした行為が増加していると関係者は口をそろえる。

ビール部門の販促費2割減の計画に疑問符がつくという声もある。あるアナリストは「同じ営業マンがビールも洋酒も売っている。ビールの営業で使った経費がどちらの予算に振り分けられているのか。非上場のため会計処理があいまいでわかりにくい」と指摘する。

9月値上げの“後出しジャンケン”さえ大ブーイングなのに、「業界への影響力の強い国税庁は、なぜ過度な安売りを野放しにするのか」との声も上がる。競合の不満は最高潮に達している。

ここ数年は、リベート政策など“横並び”が定石となっていたビール業界。しかし、サントリーがそっぽを向いて独走状態となったことで、業界に波紋が広がっている。夏本番を目前に盛り上がるビール商戦だが、サントリーに対する競合他社の視線は、かつてないほど冷ややかだ。

(佐藤未来 =週刊東洋経済)

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