「話がわかりやすい」人は一体何が違うのか 理系作家がそのナゾを解き明かす

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ただ、ハテナに対しては、きちんとした答えを提示しないと相手は納得してくれません。よくできた物語は伏線をきちんと回収してくれるから気持ちいいのです。

ハテナ展開で気をつけなければいけないのは、相手に浮かばせるハテナの数です。ハテナは1つ。2つ目のハテナを出すときは、前のハテナを解消してからにしましょう。相手の頭の中がハテナ×ハテナ×ハテナになってしまうと、こちらの説明が大変です。張りすぎた伏線はすべて回収しないと消化不良に。最終的に「こいつは何言っているんだ?」と思われたら最悪です。

ワンランク上の聞き方

『教養バカ わかりやすく説明できる人だけが生き残る』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

最後に自分が聞き手の立場での技術を紹介します。相手がわかりやすく伝えてくれるに越したことはないですが、そうではない場合も多いもの。こちらから合いの手を入れて、相手の言いたいことを引き出し、まとめてあげましょう。

私が番組やイベントでMC(司会者)を務めるときも、話がダラダラと長い人がいます。そんなときは、話し終わった後に、

「つまり、こういうことですか?」

と要約するようにしています。これには、2つの目的があります。1つは、視聴者や客席のみなさんに話の目的を再提示すること。人間は、新しい情報は、1回聞くだけで理解できないことがあります。そこで、ポイントとなるキーワードをもう一度押さえてあげると、「そういうことか!」と理解が進むのです。

もう1つはペースをコントロールするためです。聞いたことを理解するには頭を整理する時間が必要なのです。「間」を空けることでそのための時間が稼げます。要約が間違っていなければ、「そうそう」とリアクションしてくれますし、ニュアンスが違う場合は相手が修正してくれます。

注意事項が1つ。「つまり、こういうことですか?」は疑問形にしてください。「つまり、こういうことですよね」という言い方は、上から目線で角が立つ場合があります。

ぜひ今日から、「わかりやすさ」を意識しながら目の前の人との会話に臨んでみてください。きっと新たな発見があるはずです。

竹内 薫 理学博士/サイエンス作家

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たけうち かおる / Kaoru Takeuchi

理学博士。サイエンス作家。YES International School 校長。1960 年東京生まれ。東京大学教養学部、理学部卒業、マギル大学大学院博士課程修了。科学ジャンルで発信を続け、小説、エッセイ、翻訳などを中心に200 冊あまりの著作物を発刊。主な著書に『99.9%は仮説~思い込みで判断しないための考え方』(光文社新書)、『教養バカ 〜わかりやすく説明できる人だけが生き残る』 (SB 新書)、『素数はなぜ人を惹きつけるのか』 ( 朝日新書) など多数。訳書に『WHAT IS LIFE ? 生命とは何か』(ダイヤモンド社)、『超圧縮 地球生物全史』(ダイヤモンド社)がある。

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