JASRAC「金額の問題ならば交渉に応じる」 どうなる?楽器教室「著作権使用料問題」

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ーー音楽教育を守る会は、「聞かせることを目的として」(著作権法22条)を、「演奏を通じて音楽の官能的な感動を与えることを目的とする」演奏と解釈するべきだ、とも主張しています。ダンスは官能的な感動を与えることが目的だが、音楽教室は射程外であると。

ヤマハのご担当者に最初、この件で話をしたのは13年前になります。実は、そのときにも同じように主張していました。「官能的な感動」ということを主張し続ける理由はわかりませんが、おそらく、ヤマハとしても会社としてこれまで主張してきたことを、簡単には変えられないのでしょう。しかし、「裁判例があるんだから、正面からぶつかったらまずい」と、内心では思っているのではないでしょうか。

また、教育目的という主張も、単に教育だから演奏権が及ばないという定めは著作権法にはありません。著作権法38条1項では、非営利であること、著作物提供の対価を徴収しないこと、実演家等が無報酬であること、この3つが全て当てはまる場合に、例外的に使用料を支払う必要がなくなると定めています。

学校から著作権料を取ることはない

つまり、学校教育法に定める「学校」や「専門学校」での教育は、これに該当します。宇多田ヒカルさんのツイッターでの発言(もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。)が話題になりましたが、学校教育法上の「学校」で使う際には使用料を取ることはありません。ご理解いただけてないようで残念です。

「ヤマハの真意が分からない」と語るJASRACの大橋健三常務理事

——大手の楽器教室は、法的な問題について十分に理解しているはずです。彼らが強硬な姿勢を取っている理由をどのように考えていますか。

あくまで想像ですが、法的な主張ではなくイデオロギー的な主張なのかもしれません。ヤマハと直接交渉した際に、「過去にこういう判例がある」と指摘しても、「それは知っているけど、ヤマハの考え方は違います」というやり取りになってしまう。つまり、ロジカルとはいえないのです。

しかし、ヤマハの主張にはおかしな点もあります。ヤマハは音楽教室を世界41カ国で展開していますが、数年前にJASRACが行った調査では、韓国、香港、台湾、タイの著作権管理団体から、「ヤマハ音楽教室の著作権管理をしている」と回答を受けています。つまり、海外では演奏権を認めて使用料を支払っているのです。それなのに、日本では払わないという主張はおかしい。

本当に法律論で争う意思があるのか。それとも、何か違う落とし所を求めておられるのか。その真意が分かりません。

——レッスン料が授業料に転嫁されることは「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的に合致しないとの主張に共感する人も多いように思いますが。

それは程度問題でしょう。今提案している使用料は、最大で1レッスンあたり50円です。この程度の金額は何がなんでも受講料に転嫁するものとは思えません。「JASRACに使用料を払うことになったが、うちは受講料に転嫁しません」という風に企業努力で吸収できるレベルではないでしょうか。

教育・技能の教授を行う教室における著作権管理は、2012年にカルチャーセンター、2015年に社交ダンス以外のダンス教室(注:社交ダンスは1971年)、2016年に歌謡教室で始まりました。楽器教室だけ例外を認める、というわけにはいきません。

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