JASRAC一極支配に挑むエイベックスの勝算 音楽著作権ビジネスは本当に儲かるのか

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JASRAC(左)の牙城に本格参入したエイベックス。はたして勝ち目はあるのか

挑戦者が開けた蟻の一穴は、七十年来の強固な岩盤の崩壊につながるか――。エイベックス・グループ・ホールディングスは2月1日付で、傘下の著作権管理会社イーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)を合併、新会社ネクストーンを設立する。

エイベックスはJRCの株式を2015年9月に取得したばかり。矢継ぎ早の攻勢で「シェア獲得だけでなく、適正な競争による業界全体の規模拡大を狙う」(ネクストーンのCEOに就任予定の阿南雅浩氏)。

なぜ今、エイベックスが参入するのか

音楽著作権の管理ビジネスは、重層構造の上に成り立っている。利用者に多くの楽曲を使ってもらい、作詞家や作曲家に収益を還元するのが、日本音楽著作権協会(JASRAC)をはじめとする著作権管理事業者の役割。だが、「利用者の立場からすると、現状は使いにくい点が多い」(阿南氏)。

たとえば、新サービスへの対応の遅さ。CDの販売が落ち込む中、エイベックスなどのレコード会社はこぞって音楽配信に力を入れている。そこに通信系の新規参入組も加わり、音楽配信市場では新しいサービスが日々生み出されている。ところが、利害関係の調整に時間がかかり、JASRACは迅速な対応ができていないとの見方がある。

こうした事情もあってか、サービス数が増えているにもかかわらず、日本の音楽配信市場は停滞が続く。ネクストーンは利用者が使いやすいメニューをそろえ、「新しい聴き方」を生み出すことで、市場を拡大させたい考えだ。

ただ、道のりは平坦ではない。エイベックスは目下、JASRACに委託していた楽曲約10万曲の移行を進めており、今後の新曲はできるかぎりネクストーンに委託していくという。しかし、10万曲のうち、現時点で移行が決まったのは約7000曲。JASRACの約款で「委託先の変更は3年に1度しかできない」と定められており、思うように著作者の同意を得られないまま、2015年末の変更期限を迎えたためだ。

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