イタリアを目指す「難民」の知られざる素顔 映画「海は燃えている」の監督が語る
女優メリル・ストリープも、建築家・磯崎新も絶賛したドキュメンタリーがついに公開される。難民危機の最前線となっている島の日常を記録した「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」の監督ジャンフランコ・ロージにインタビューした。
部屋に入ってきたジャンフランコ・ロージ監督に「GQの取材です」と自己紹介したら、「僕、ヌードになろうか?昔アバクロのモデルだったんだよ」と、いたずら少年のような笑顔。両手を広げながら陽気に話すロージ監督は、一瞬で相手の心を和ませる魅力の持ち主だ。
そんなロージ監督の作品が2月11日、日本で公開される。タイトルは「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」。ヨーロッパを目指す難民の玄関口、イタリア・ランペドゥーサ島を舞台にしたドキュメンタリーだ。慎ましく暮らす島の人々と、命がけで島に渡ってくる難民たちの素顔が、美しく詩的な映像で表現されている。
本作は2016年のベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を受賞したほか、2月末に開催されるアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。「欧州統合」の夢が潰えようかというヨーロッパと、大統領選から分断が続くアメリカで、激賞をもって迎えられた作品である。
今回、ロージ監督にインタビューシリーズ「GQ&A」にご登場願い、作品のこと、難民のこと、ドキュメンタリーの作法のことを訊いた。
島は世界のメタファーだ
──本作では、島の住人と難民の生活が交わらないところが描かれています。これは世界に共通している問題だと感じました。島の中で難民に接するのはピエトロ・バルトロ医師たったひとりだけですね。彼以外の人々は、次々と難民が押し寄せる現状についてどう語っていましたか?
バルトロ医師には、ノーベル平和賞が授与されるべきだと思わないか?過去20年にわたり、ランペドゥーサ島には50万人以上の難民が上陸し続けているが、島の人々はいつだって彼らを歓迎してきた。