クーデター未遂事件で膨らむ「トルコの危機」

政治・外交リスクの高まりで経済も薄氷踏む

クーデターが未遂に終わり、7月18日、イスタンブールのタクシム広場に集まった人々。今後、反乱分子への大規模な掃討が行われると見られる(写真:AP/アフロ)

現地時間の7月15日夜、トルコ軍の一部勢力が国営テレビ局を占拠して「憲法に基づく秩序と民主主義を取り戻す」との声明とともにクーデターにより政権を掌握した旨を発表した。彼らは最大都市イスタンブールのボスポラス海峡大橋を封鎖したほか、首都アンカラでは大国民議会(国会)への爆撃を行うなどした。

しかしながら、休暇中であったエルドアン大統領が民間テレビ局を通じて市民に対して反乱軍に対するデモを呼びかけたほか、政府と治安部隊が鎮圧に乗り出した結果、翌16日には反乱軍の主要部隊が相次いで投降した。その後も散発的に一部の反乱軍と治安部隊との間で衝突が発生する状況は続いたものの、17日中にはほぼ決着がついた。当局が一連のクーデター未遂に関わったとして軍関係者のみならず司法関係者なども含めて6000人以上を拘束することで、混乱が終結したのである。

金融市場では一連の混乱を受けて、通貨リラが一時的に大きく下落したものの、予想外に早く事態収拾が図られたことに加え、トルコ中央銀行が金融市場の安定に向けて民間金融機関に無制限の資金供給を行う方針を発表したこともあり、早々に落ち着きを取り戻してきている。

ここ数年エルドアン大統領の下でトルコ政府は強権的な姿勢を強めてきたが、今回のクーデター未遂をきっかけにそうした色彩が一段と強まる可能性は高まっている。

軍・司法関係者とエルドアン政権との対立

トルコ政治を巡っては、建国の父であるムスタファ・ケマル(アタチュルク)が軍主導によるトルコ革命を指導してトルコ共和国を建国し、同国の国是である世俗主義、民族主義、共和主義が掲げられた経緯がある。そのため、軍はこうした基本姿勢の「守護者」を自認するとともに、過去においては政治及び経済の混乱に対してクーデターを行うことがあった。

国是に掲げている世俗主義を守る観点からは、かつて軍主導でイスラム政党を非合法化しようとの圧力を強める場面もみられた。現在の政権与党である公正発展党(AKP)は非合法化の対象となったイスラム政党(福祉党→美徳党)を起源としているので、軍との対立が懸念される局面もあった。

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