乃木坂46、女性アイドルの頂点に立った必然 あのAKB48とどう差別化し、のしあがったか

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そこで2014年から「アンダーライブ」というライブ活動を始めたところ、徐々にファンの間で応援する機運が盛り上がっていく。2016年には、4~9月に東北・中国地方のツアーもこなして、アンダーも動員力の手ごたえをつかんだ。

年末恒例、日本武道館でのクリスマスライブ「Merry X'mas Show 2016」(各公演1万2000人)では、選抜が単独公演2日間なのに対してアンダーが同じく単独公演2日間と、集客でも互角の力量を見せつけている。しかも、女性を含むライトなファン層がかなり含まれている選抜と違って、男性ファンが圧倒的に多いアンダーのライブの熱気は、明らかに選抜を凌駕していたのである。

「美」の追求は、従来のアイドルにはない乃木坂46の最大の特徴かもしれないが、同時にその一点への収斂は、魅力の幅を狭めてしまう危険性もはらむ。AKB48はバラエティを含めメンバー個々の活動範囲が広い。もっとも乃木坂46は、いつの間にか新たな魅力を胚胎し、成長させていた。

天下を獲り、どこまで成長するのか

アンダーのセンター、寺田蘭世(中央)は、年末の武道館ライブでモハメド・アリの言葉を引用しながら、アンダーの第2章を作ると誓った(ソニーミュージック提供)

「実は(選抜とアンダーの違った魅力という)二重構造があるので、ミリオン達成もできたのだと思っています。乃木坂46には奥行きがすさまじくある。アンダーを見てもらえれば、乃木坂が何でこんなに人気があるのか、たぶん理解してもらえると思います」(同)。

ライブ活動の締めくくりでもある、クリスマスライブの千秋楽は、選抜ではなくアンダーに託された。選抜のライブでは見られなかった”ダブル・アンコール”が沸き起こり、ファンのアンダーメンバーに対する思いの強さが存分に証明された格好だった。

終演後の関係者向けあいさつで、あるソニーミュージック幹部は、「この子たちが選抜の尻を下からひっぱたいてくれれば、まだまだ乃木坂は上に行ける」と期待をにじませた。

メディアに登場する華やかな選抜メンバーの牽引頼みでない、乃木坂46の人気と実力の底堅さを物語っている。デビュー以来、シングルCDの売上高がずっと前作を超え続けているという乃木坂46だが、まだまだ坂を登る勢いが衰えることはなさそうだ。

竹内 一晴 ジャーナリスト

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たけうち かずはる / Kazuharu Takeuchi

1970年名古屋市生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大手芸能事務所、CS演劇専門放送局プロデューサー、写真週刊誌専属記者等を経て2004年からフリー。報道・表現の自由、大学自治、韓国社会事情、カラオケ、アイドル等の記事を執筆。田島泰彦編『個人情報保護法と人権―プライバシーと表現の自由をどう守るか』に論稿掲載。48グループの推しメンは松井珠理奈(SKE48)、注目株は山田菜々美(AKB48・Team8)だが、全メンバーを公平に見ることをモットーとする。

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