「東アジアの平和」は米軍に頼らざるを得ない 米新政権を孤立主義に走らせるのは危険だ
型破りで過激な言動を繰り返すドナルド・トランプ氏が率いる米新政権がついに誕生した。1月20日の大統領就任演説でトランプ氏がイスラム国(IS)など「イスラム過激主義のテロ根絶」を前面に押し出すなか、トランプ政権のアジア安全保障政策はいったいどうなるのか。中国や日本を含め、アジア諸国の政治指導者や安全保障の専門家らが今、その具体的な政策の行方を見守っている。
トランプ政権のアジア安保政策がいかに重要か。安全保障に詳しくない一般読者に議論を分かりやすく理解してもらうため、一つの悪いシナリオを挙げてみたい。
在日米軍や在韓米軍が大幅に縮小したら?
「米国第一主義」を掲げるトランプ政権が「孤立政策」を採用したり、中東への兵力シフトを図ったりすることによって、仮に在日米軍や在韓米軍を大幅に縮小した場合、中国や北朝鮮は間違いなくこれまで以上に軍事攻勢を強めてくるだろう。
中国は、米国というアジア太平洋での強いカウンターバランスが無くなることから、南シナ海や東シナ海への進出を加速。北朝鮮も核ミサイル開発を一段と強化する。日本と韓国はこうした中朝からの高まる脅威に耐え切れず、自国の核兵器保有議論をそれぞれ本格化させる可能性がある。そして、これは国際的な核拡散防止条約(NPT)体制を弱体化しかねない。
さらに、仲裁者や仲介者としての米国のプレゼンスが薄れることから、日韓は慰安婦問題など歴史や領土問題でさらに関係を悪化させる。中国も日韓の領土と歴史問題には便乗する形で関与してくる。
こうしたすべての政治的な緊張対立は、ここ数十年間「世界の成長センター」として台頭してきたアジア経済全体をぐっと冷え込ませるマイナスの波及効果をもたらす。
これよりも悲観的な最悪シナリオがある。
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