「同一労働同一賃金」で賃金水準は上がるのか 高齢化による非正規社員の増加が問題

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同一労働同一賃金の影響を見極める間にも社会全体における非正規社員の割合は増加するだろう。

非正規社員の割合を年齢階級別でみると、65歳以上が圧倒的に高く、55~64歳、15~24歳、45~54歳、35~44歳、25~34歳の順で割合が高い。年齢による割合の違いは、基本的には年代ごとのライフスタイルや企業内における役割の違いなどが反映されている。

10代や20代などの若年層は将来の自由度を確保するために非正規社員をあえて選ぶケースがあるだろうし、企業が試用期間を設定するケースも多そうだ。高齢層はリタイア後の再雇用が非正規となりやすいことなどが考えられる。就職氷河期に就職活動を行った世代の中には不本意なまま非正規社員にとどまっている例が多いなどの各年代に固有の要因があることも知られているが、ライフスタイルによって決定される人数と比べれば影響は小さいだろう。

高齢化という人口動態の変化で非正規が増加

今後も年齢階級別の非正規社員の割合が緩やかに増加する場合、全体の非正規社員の割合はどのように変化するだろうか。年齢階級別の将来の人口推計を用いて、将来の非正規社員の割合を試算してみたところ、結果は今後も非正規社員の割合は増えていくというものだった。非正規社員の割合が高い65歳以上の人口構成が増えるため、非正規社員は自然に増加する可能性が高いのだ。

 

年齢階級ごとの非正規社員の割合が高くならなくても人口動態によって自然と非正規社員の割合が高くなる見込みである。その結果、マクロで見た家計部門の所得には減少圧力がかかり続ける可能性が高い。

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